冷製パスタについて
冷製パスタは、作る上で一番楽しいカテゴリーかもしれない。味付け的に無茶というか、許容される味付けや素材選択の範囲が広い気がする。ゆえに俺が一番好きな、作る上でも自信のあるカテゴリーだったりもする。それは、昔蕎麦打ちにハマった(今も好きだけど)事にも由来する。その時も、やはりタネモノ(暖かい丼もの)よりもりやせいろばかり食べていた。蕎麦には、なんとなく『タネモノは邪道』的な価値観があって、『麺の腰や香りを楽しむなら冷やしで』というのが一般的な見解のようだ。小麦粉と違い腰を出しにくいから冷水でしめる、というのもあるけど、俺は単純に好きだから、蕎麦は冷やししか食わない。
日本でパスタといえばスパゲッティに代表されるロングパスタが主流で、数多あるショートパスタはあまり普及していない。マカロニ状のものか、良くてコンキリエ(貝)かファルファッレ(蝶)くらいのものだ。ところがパスタには数百もの個性的な形状のパスタがあり、そのバリエーションの豊富さがパスタの楽しさの大きな要因の一つなのだが、日本人は残念ながらその楽しさのごく一部しか知らない。何故だろうか。単純に流通してないからというのもあるが、パスタ=麺との固定観念が強いからというのもある。パスタは、麺というより、その形状や料理法のバリエーションの多さから、麺料理も含む飲茶の世界観に近いと思っている。その中で、サラダ的な捉え方から、勿論せいろ的な捉え方も出来る冷製パスタなら、その多彩な楽しみをより伝えやすいように思う。