パスタマン沖縄を喰らう〜エピローグ(食い物以外の観光をまとめて)
沖縄ツアーのエピローグとして、食事以外に行った観光スポットをコメント無しで載せておきます。流れに沿って食のエントリーのリンクも張っておきますので、通して読んでみる場合や、人に紹介する場合はこのエントリーの〜固定リンクを活用される事をお勧めします。
沖縄ツアーのエピローグとして、食事以外に行った観光スポットをコメント無しで載せておきます。流れに沿って食のエントリーのリンクも張っておきますので、通して読んでみる場合や、人に紹介する場合はこのエントリーの〜固定リンクを活用される事をお勧めします。
ひかり食堂で、この旅のハイライトとも言える食体験を済ませた我々は、二日間お世話になったレンタカーを返しに再び那覇市内へと南下し、二度の往復でもうすっかり馴染み深くなった車中から流れる景色に、いよいよ旅の終わりを感じていた。おもろまちで車を返したら、あとは最後の晩餐を短時間で済ませて空港に向かうだけ。これまで以上の密度の旅の終末に向かって、虚脱感と充実感を交互に味わいながら、徒歩で最後の目的地に向かう。目指すは山羊料理の店、さかえだ。
実はこの店、「山羊料理」の看板は名ばかりで、現在では基本的に山羊の扱いを止めているそうだ。理由は単純、仕込みや下処理が大変な重労働だから。おばあの年齢的な部分が大きいらしい。そこに手を抜かない事がこの店をこの店たらしめていたのだから、そこに手をかけられなくなった以上、止めざるを得ないのは理解出来る。だから、当初この店は我がツアーリストから外れていた。しかし沖縄に来た以上どうしても山羊が、それも最も定評のあるこの店の山羊を食いたい欲求は押さえられず、もう山羊を止めている事を承知で、沖縄に着いた初日に駄目もとでさかえに電話を入れてみた。すると、ツアー最終日だけは山羊をやれるという。またも食の神が舞い降りた瞬間だった。昼は既にひかり食堂に決まっていたので、フライト直前の16時頃に急遽予約を入れ、おやつと称して強引にツアーに組み込んだ。店に行ける事になった経緯からも、事前の期待度からも、本ツアーにとってこれ以上の締めくくりは無い。店の陰も見えない頃からワクワクが止まらない。あまりに行ける事が嬉しくて、最早味などどうでもいいだろう、という本末転倒な感情を抱きつつ、時間通りに店に到着。
いよいよ人生初の沖縄ツアーも残すところあと二食。名残惜しさもあるが、ここにきていくら時間が経っても腹が引っ込まない状況を鑑みるに、どうやらこの辺が潮時ということだ。にもかかわらず、本ツアーの中でも最もヘビーな二食を最後に持ってくるあたり、青いというか我が胃袋を過信しているというか、こういう事をするから、帰途につく頃には毎回明日のジョーの最終回のような状態になるのだ。しかし俺は、最近すっかり脂に弱くなったとはいえ、結局はヘビーな食い物が根本的に好きなのだ。そして好きなものは最後まで取っておくタイプなのだ。この性分は、例え歳をとってさらに食えなくなっても変わる事は無いだろう。
さて、ラス前のランチに選んだのは、足てびち(つまり豚足の煮込み)で有名なひかり食堂である。ひかり食堂という店は本島にもいくつかあるらしいが、ここは創業40年になる浦添の店である。この店については多くを語らない。こざかしい説明など一切必要ない。先に言ってしまうがとにかく素晴らしいの一言である。豚という食材を愛してやまない俺にとって、豚料理における、ある方向性の一つの完成形であるといえる。沖縄に来たら何を置いても必ず訪れるべき店だと断言出来る。
出だしは悪かったものの、最後はとても満たされた気持ちで終われた昨夜の…いや今朝の食事から数時間。今日は市場で朝飯を食おうということで、朝は少し早めに起きて、市民の台所から観光地として変化を遂げた第一牧志公設市場へ向かう…予定なのだがその前に、やはり市場本来のディープさもしっかり味わっておこうと思い、そこから徒歩でいける農連市場を先に歩いてみた。華やかな国際通りに面した公設市場とは違い、これが本来の島人の生活環境なんだろうなと思わせるイナタさがいい。GWだというのに人通りも少なくまるで過疎の町のような雰囲気。ここから10分も歩けば竹下通りのような場所があるのに…まさに光と陰という感じ。
その農連市場、流石に朝8時では遅かったのが、そもそもこういうショボさが通常の状態なのか分からないが、買っていいものかどうか迷うほど怪しい見た目の食材ばかりで、いくら食に関してはチャレンジャーな俺でも流石に冷やかすだけに留めておいて、そそくさと本来の食事場所である観光市場に向かった。
ほどなく第一牧志公設市場に到着。肉や野菜、また外には服飾や雑貨などあらゆるものが取り揃えられているが、我々は脇目もふらず魚市場に直行。一階の仲買人から魚を買い、二階の食堂で調理してもらおうという、この旅でも最も観光らしい食事を楽しもうという寸法だ。観光地化した市場の食堂に、ハナから料理としての完成度は全く期待していないが、本土では見かけない珍しい魚をその場で調理してもらうというのはそれだけで楽しい。また、今回のツアーで最も食ってみたかったアバサー(ハリセンボン)を食す機会はここだけなので、余程下手な料理人でない限り楽しめるだろう。
結構な数の店が並ぶ中で、金髪グラサンの、いかにも田舎のヤンキーな風情のにいちゃんがやたらと絡んでくるので、「どうせどこで買っても大して変わらないだろう」と高をくくり、一切任せることに。なにせ昨日の鶏がまだ多少残ってる段階での朝食である。余り選びすぎると後に響く。ヤシガニやらセミエビやら魅力的な食材も数多く売っていたが、今回選んだのはミーバイ、アサヒガニ、そしてメインのアバサーの3種。皮が剥がされたアバサーのあまりの可愛らしさに萌えた。ミーバイは半身を刺身、残りは焼いて、アサヒガニは味噌汁、そしてアバサーは当然唐揚げである。その旨を告げて、魚を運ぶあんちゃんの後ろについて二階へのエスカレーターに向かう。
というわけで、ついにやってしまった本日4食目(新垣ぜんざいをいれると5食目w)の食事。しかも焼き鳥w。「いや、食べてる途中で午前0時を越えさえすれば、これは明日の朝食である」と言い聞かせ(しかし翌日は翌日でしっかり朝食はとる)ながら、なんともイナタい雰囲気の路地を入って店に向かう。表の佇まいは至って普通の駅前居酒屋。しかし中は意外と雰囲気のある内装となっていて、この時間帯(夜11時半過ぎ)も相まって非常に落ち着ける空間となっている。
しっかり広い厨房に期待も膨らみ、中を注意深くみていると、異様な存在感を放っている年代物(というより最早遺跡級?w)のロースターが目を引く。なるほどこれで鶏を焼くのか。ますます楽しみになってきた。
おやつの後はまたまた城址を巡りながら南下し、夕食のために再び那覇の方へ戻ってきた。この日の夜は単体の料理ではなくコースとして沖縄料理を食べる事でこの地の食を俯瞰したかったので、その手の定番として山本彩香を予約しようと思ったのだが流石にGWゆえ、一週間前から生憎満席。次候補として選んだのがこの月桃庵である。譚亭と散々迷ったのであるが、こちらは次に行く事にする(帰ってきた後で知人に譚亭をお勧めされてちょっと後悔したがw)。ちなみに赤坂の方に暖簾分け店(らしきもの?)があるのだが、行ってみる気はさらさらない。
事前の調べによると、この店かなりリーズナブル。質はまだ(この時点では)食べてないので分からないが、内容に比してコストパフォーマンスが良いという。確かに予約時に選んだ4500円のコースをネット等で事前に見ると、安いと感じる。自分が今回期待する内容よりもかなり庶民的な料理が出てくる事をあらかじめ覚悟しながら臨んだ。直ぐ横にパーキングがあるので車での利用でも大丈夫だ(と珍しくグルメサイトのようなお役立ち情報を入れてみるw)。
店の佇まいはなかなかに風情がある。看板が無ければただのいなたい古民家である。が、中は随分と手を入れてある様で、ちょっと西洋風、でも結局無国籍wなこじゃれインテリアとなっている。そのギャップも含めてなかなか面白い。若干落ち着かないのでもう少しオリジナルの姿を残してもいいとは思うけど、まぁ文句を言う程のものではない。料理さえ満足出来ればそれでいいのだ。
ということで、きしもと食堂に訪れた者なら必ずセットで訪れるぜんざい屋、新垣ぜんざいに来てみた。ぜんざい、こちらで言うところのかき氷である。この店は、おあつらえむきにきしもと食堂の斜向いにあるので、そばを食ったあとの口をさっぱりと洗い流してリセットするためにあるような店であるが、きしもと食堂よりむしろこちらの方をメインに訪れてもいいと個人的には思う。たかがかき氷だが、それくらい心にしみる滋味深い味わいのぜんざいであった。
二日目の朝。本日の午前の部メインイベントはちゅら海水族館であるため、昨夜は那覇から移動して茶谷のリゾートホテルに泊まり、朝飯は食わずにそのまま本部町を目指した。朝食に政良さしみ店を選んだからである。ここを選んだ理由は今回行く他の店のように色々な情報を精査して決めたのではなく、たまたまこのとても魅力的なレビューを読んだから。一目惚れである。しかしそんな大幅な期待も空しく、早起きして訪れたにも関わらずやってない…定休日でないのは調査済みの筈だが…まぁ何となく予感はしていた。何せ『休日=風邪を引いたとき』という店であるw。その緩さに魅かれて敢えて選んだのだから、自業自得である。
流石に朝っぱらからやってる店も他になく、仕方ないのでちゅら海水族館へ直行した。飯はちゅら海内のテキ屋で不味いタコライスと油まみれのチキンレッグを食しお茶を濁した。二日連続で幸先の悪いスタートである。さてどう挽回するか…まぁ例によって予定より一食増やして帳尻合わすかw。
ちゅら海のスケールのデカさを堪能(食以外の事は後でまとめて)したあとは、失敗の朝を取り戻す為に早めのブランチ。もう一度本部町に取って返し、昨日に引き続き二杯目の沖縄そば、きしもと食堂に向かう。情報によると、こちらは創業100年以上になる、現在の沖縄では数少なくなった昔ながらの伝統的な作り方を守ってる店であるとの事。昨日のニューウェーブ感たっぷり(?)のそばと食い比べる事で、最短距離で沖縄そばを知った気になろうという寸法だ。それだけの歴史を誇る店ならば、美味かろうと不味かろうと、つけ麺における大勝軒のようにこれを一つの基準としても間違いはなかろう。沖縄そばの何たるかの片鱗でも見えてくれば幸いである。
沖縄だからといって、いつでもどこでも新鮮な魚が手頃な値段で食えるなどとは、沖縄に行く前ですら考えた事はない。市場にある食堂だからといって必ずしも新鮮な魚が手頃な値段で食べられるわけではないのと同じ事である。周りが全部海だからと言って、勝手にポンポン魚が捕れていつでも食い放題なわけではない。漁師、仲買、料理人など、美味い魚が食える場所には必ず裏でそれに血道を上げている人がいるのである。至極当然の事だ。逆に言えばそういう人々がいない場所には、たとえ環境が整っていた所で宝の持ち腐れ。美味い魚など望むべくもない。つまり美味しい魚が「食える」場所と美味しい魚が「食えそう」な所は違うと言う事だ。
沖縄は、どう考えても美味い魚がたらふく食えそうな場所である。しかし、これまでの経験上その先入観が当てにならないのは重々承知している。「適当に店を選べばどこでも当たり」なんて事は絶対ない。それゆえ例によって様々な情報を頼りに事前に「魚食うならここだろ」と選んだのがこの苫屋である。沢山候補があったが、最終的には直感で決めた。「ここの親父は信用出来そうだ」と。
着いて早々結局昼を2食食う羽目になったので、識名園、首里城を歩き倒して(この様子は後ほどまとめて)無理矢理胃袋に隙間をこじ開け、18時の開店時間10分前に到着。入り口が若干分かりにくく二度程通り過ぎたが、開店時間丁度には既に座敷でおしぼりを開けていた。ただ、店の看板の横に『伊集家』は無いだろうw。『お通夜の食い物は、直ぐ下で新鮮な刺身を注文出来ていいなぁ』とか余計な事を想像してしまったではないか。
店内の雰囲気は写真の通り、決して不潔感はないがどことなく雑然としていて、お世辞にもいい雰囲気とは言えないが、ちょっと排他的な空気と偽物ではない年期を感じる空間は、粗方事前の予想通り…つまりジャスト俺好みである。そして奥のカウンター内部にはいかにも漁師上がりで社交性を排した厳つ目な親父がのそーっと動いている。耳を澄ませばカウンターの下から時折水の跳ねる音…怪し過ぎである。
しばらくすると、準備を終えた親父がカウンターからついに出てきて「メニューはない」、「飲み物などはセルフサービス」など必要事項を淡々と告げ、最後に少し顔が緩んで「海老食べる?」と聞いてきた。俺は直感でこれを挑戦と受け取りw、「当然あるものは何でも食うよ」と、午後すでに3食目なのを強引に忘れて告げると、親父は少し笑って「セミ海老のいいのがあるから」と言い残してまたカウンターに戻って行った。どうやらここの親父は良く食う奴が好きなようだ。俺もここまでのやり取りで、「この店は好きな種類の店だな」と、料理が出てくる前から既に感じていた。
というわけで、かつてない程の激しい鼻息が俺の鼻毛を揺らしつつ、人生で初めて那覇空港に降り立ったのは2008年5月1日の午前中の事だった。荷物も預けず、予約しといたレンタカーもまだ取りに行く前に、まずはランチにアグーを喰おうという事である店(名前は伏せる)に直行したのだが、これが我ながら吃驚する程期待はずれでw、これまで行なったどのツアーよりも暗雲立ちこめるツアーの始まりとなってしまった。なにせ皆さんが行くような旅とは違い、我々のツアーは、沖縄なのに海の水には一滴も触れない(結局マジで一滴も触れませんでした)ような、食が駄目なら全て駄目な諸刃の剣の旅なのだ。『おい、大丈夫かよ沖縄…』と、今まで俺の脳内で発酵し倒した憧れがボロボロと崩れて行きかけていく。
しかしそんな事を今更言っても直ぐ帰るわけにもいかないので、レンタカーを借りて荷物を積み、おやつwに予定していた沖縄そば屋に向かった。
今回のツアー中、沖縄そばは、比較的新しい店と、現存する店で出来るだけ伝統的なやり方で作っている店の二店を選んで食べ比べる予定だ。まずは比較的コジャレてて新しめの店として選んだのがこの『てんtoてん』だ。何しろ沖縄本島でそばを喰うのは初めて故、恐らくこの一軒だけで沖縄そばの味を分かるわけではないだろうが、俺にとってはこの店の味がそのまま沖縄そばという食い物そのものの印象を決定付けてしまうことになる。心して食わねばならない。