手打ち蕎麦満志粉@ひたちなか
早めのランチを済ませ、本ツアーの目標に向けてさらに北上を続ける。途中阿字ケ浦の荒れ狂った海岸(写真。演歌が似合うほどの悲哀漂う景色)を冷やかしつつ、食後のおやつwとして第一候補に上げていたこの店に訪れるも、何故か準備中でやってる気配がない…うーむ、予約の電話を入れるべきだったか。しかし、予想以上に辺鄙な場所にあるなぁ。店の前の道は結構広いが、車は殆ど通らない。来る前から結構な期待をしていたのだが、それをますます増幅させるシチュエーション。隣の製麺所系うどん屋もちょっと気になりはしたが、後ろ髪を激しく引かれながらも大人しく第二候補に上げていた店に向かう。前回のツアーでもこの店の代替案として候補に挙げていたし、開店当時から結構名前は聞いていたので、いつかは訪れなければいけないと思っていた店である。
この店が、北茨城の店であるにもかかわらず、俺がオープンした当初にこの店を知り得たきっかけである、店主が「茨城新聞社発行の「蕎麦打ち名人が選ぶ50店」の編者である」、「全日本素人そば打ち名人大会の第3代名人である」などという情報は、ちょっと検索すればいくらでも出てくるので割愛。好きが高じて商売にしてしまったパターンの典型というか、インディーズからメジャーデビューというか、店主のそばに対する偏愛が伺い知れるトピックである。
正直、昨年無事再訪することができた慈久庵を越える蕎麦は、今後しばらくは食えないだろう事は重々自覚しているので、あれ以上を求めるような過度な期待はない。というより、あの、蕎麦そのものだけでなくシチュエーションやそこに至るまでの道程なども含めた、ある種の到達点を体験出来たからこそ、以前より気楽に蕎麦と対峙し楽しむ事が出来る。年始に訪れた関の助六さんしかり、ようやく蕎麦と言う食べ物を俯瞰した視点で余計な先入観無く楽しめるようになったのだと思う。俺に取っては実に喜ばしい事である。
まずは自家製の豆腐から。ここは蕎麦以外のサイドメニューがそれほど充実してないのだが、これはおやつなので何も問題ないw。豆腐は基本的に濃厚なタイプが好きな俺ではあるが、ここの淡白さはいい。水がいいのだろうけど、香りは申し分ないので満足感がある。薬味と味付けは必要ない。
例によってカミさんと俺とで1枚ずつ。まずはカミさんの頼んだ鴨汁せいろを味見。細打ちのそば切りは実に精度が高く、確かな技術を感じさせるもの。素人名人云々は知らなくても、そこには日々の鍛錬が明確に集約されている事が良く分かる。香りはそれほど高くないようだが、甘みは充分。この店をはまぐり屋の補欠としていた事を申し訳なく思わせるには十分なクォリティである。対する鴨汁も、必要充分な鴨の動物性の旨味に、醤油と鰹の立ったキレのある味わいで実に好み。やはり蕎麦はこうでないと、というお手本のような蕎麦である。
そして俺の頼んだのは、一日の枚数に制限のある田舎蕎麦。一言美味い。当然だが、十割ならではの甘み、香り、歯ごたえ。通常の細切りとは別格である。それに、通常の細切り同様の確かな技術を感じる佇まいは、店主のこだわりや人柄までもが感じられる気がして、食べてる最中ずっと心地よい妄想(修業時代の苦労してる姿など)が勝手に涌いてw実に心地よかった。ある意味官能的な蕎麦である。それはやはり前述の蕎麦に対する視点の変化による物が大きいだろう。清々しい食体験であった。
俺も昔、何年か自宅でそばを打ってみた事があるが、あれは単に好きってだけじゃとても形にすらならない代物である。いや、姿形は似せられても、味のクォリティや、それを持続的に維持する精神的持久力は、並の努力では得られない。相当に求道的な質でないとまともには取り組めない上に、おまけに終わりが見えない。『よし、これで完成した』というカタルシスが全く得られないのだw。一生をささげる覚悟でもないととても出来ない。それだけに、本当に美味い蕎麦を打つ職人に、俺は他のジャンル以上に畏敬の念を持つし、酷い蕎麦を出す店には他のジャンル以上に心の中で敵意を示す。一言で言えば、舐めてはいけないジャンルなのだ。それでも、素人玄人に関わらず、蕎麦打ちの虜になる人は沢山いる。それは、それに見合ったいい知れぬ感動を、たかが1枚のせいろから得られるからだ。東京、というか東日本で生まれた以上、この刷り込みは一生消えないだろう。もし西に生まれていたらうどんに行ったかというと、それは分からないが。
さて、昼飯二連ちゃんの後は、夜のメインイベントに備えて腹ごなしすべく、小木津の自然公園にて散歩の予定。常々『腹ごなしは滝か城』と決めてるwのだが、今日は滝にスポットを当ててみた。
Comments
お蕎麦大好きです!!(そばの国の人なので@山形)
田舎そば、美味しそうだなあ。
やっぱり蕎麦の味と香りがしっかりタイプが好みです。細くて白くてお上品なのよりも食べごたえありの方が★★★
じゃり父も趣味で蕎麦打ちます。素人蕎麦にしてもまだまだですが(ブチブチ切れるし、切り方もバラバラ)田舎に帰るとついついリクエストしちゃいますね。愛も隠し味♪
Commenter: じゃり | 2008年05月19日 10:36
昔虎ノ門の出羽香庵で食べた板蕎麦が、俺の慣れ親しんだ江戸前のものとはまた違った美味しさで、山形の蕎麦はいつか食べ尽くしてみたいんですよね。今年アル・ケッチャーノが予約取れたら蕎麦ツアーやろうかな。
父上の蕎麦は、きっと美味いでしょう。まず東京とは水が違いますものね。
料理にとって愛情、隠し味というよりそれが全てだと思います。
Commenter: pasta-man
|
2008年05月23日 04:04
アルケ行きたいけど行ったことがないんです(家からちと遠いので帰省してもなかなか・・・。
ご一緒したいほど!!)
じゃり父は蕎麦食べるのも好きで県内もいろいろ行ってるようなのでその際は美味しいところお教えしますね。
山形の蕎麦は素朴で力強いタイプが多い気がします。
Commenter: じゃり | 2008年05月23日 10:28