月桃庵@県庁前
おやつの後はまたまた城址を巡りながら南下し、夕食のために再び那覇の方へ戻ってきた。この日の夜は単体の料理ではなくコースとして沖縄料理を食べる事でこの地の食を俯瞰したかったので、その手の定番として山本彩香を予約しようと思ったのだが流石にGWゆえ、一週間前から生憎満席。次候補として選んだのがこの月桃庵である。譚亭と散々迷ったのであるが、こちらは次に行く事にする(帰ってきた後で知人に譚亭をお勧めされてちょっと後悔したがw)。ちなみに赤坂の方に暖簾分け店(らしきもの?)があるのだが、行ってみる気はさらさらない。
事前の調べによると、この店かなりリーズナブル。質はまだ(この時点では)食べてないので分からないが、内容に比してコストパフォーマンスが良いという。確かに予約時に選んだ4500円のコースをネット等で事前に見ると、安いと感じる。自分が今回期待する内容よりもかなり庶民的な料理が出てくる事をあらかじめ覚悟しながら臨んだ。直ぐ横にパーキングがあるので車での利用でも大丈夫だ(と珍しくグルメサイトのようなお役立ち情報を入れてみるw)。
店の佇まいはなかなかに風情がある。看板が無ければただのいなたい古民家である。が、中は随分と手を入れてある様で、ちょっと西洋風、でも結局無国籍wなこじゃれインテリアとなっている。そのギャップも含めてなかなか面白い。若干落ち着かないのでもう少しオリジナルの姿を残してもいいとは思うけど、まぁ文句を言う程のものではない。料理さえ満足出来ればそれでいいのだ。
まずは食前酒の代わりにシークワーサージュース。恐らくフレッシュではないと思うのだが、絞り汁は入れてるのかな? キリッとした酸味が楽しめたのでこれはこれでよし。まぁ100%フレッシュでも困るけどw。
先付けはモズク、お造り、シャコガイの和え物、ジーマミ豆腐、島豆腐など。モズクもお造りもシャコガイも昨日食ったものの方が美味かったのであまりコメントはないが、自家製のジーマミ豆腐と紫芋は美味しかった。特にジーマミ豆腐はやはりこれくらいの濃厚さ加減がちょうどいい。
先付けを食べた段階で感じるのは、やはり全体に思ったよりも味付けが庶民的かつ家庭的で、良い意味で親しみ易い印象である事。やはり値段を鑑みれば、プレゼンテーションを多少小綺麗にしてあるものの、基本はシンプルな琉球家庭料理なのだろう。期待とはやや違ったが、これはこれで楽しむ余地は充分ある。
沖縄家庭料理の定番、パパイヤイリチー。沖縄料理の中でも好きな一皿だが、そんなに数多く食べた事は無いので、どんな形が正解なのか分からないが、俺の好みからするともう少しパパイヤをシャキッと、味付けを上品にしてもらえたら良かったかもしれない。それぞれの食材の食感の違いをもっと楽しみたかったのが正直なところ。勿論おふくろの味的な観点から見ればホッとする味わいではある。
田芋のコロッケとつるむらさきのおひたし。このコロッケはとても好みの味であった。衣の香ばしさと中のトロみのコントラストもいいし、田芋のほっこりした食感と甘みを殺さない程度の味付けで、アクセントの松の実や椎茸が効いている。ツルムラサキの方は、見た目以上に濃厚なソースとの組み合わせが新しいといえば新しい。
足てびち。これはまぁ、それほど特筆する味ではないかなぁ。味付けはちょっと単調かな。実際、翌日とても美味しいてびちを食べてしまったので、正直今(5ヶ月経過w)となっては殆ど印象に残っていない。これが本土で食べた初めてのてびちだったのだが、これなら以前鹿児島で食べたとんこつの方が断然美味かったなぁ。
伊勢エビのウニソース添え。オーブン焼きにしてある。小振りな伊勢エビなのでこういう形で凝ったプレゼンテーションをしてメイン感をだしているのであろうが、正直伊勢エビは伊勢エビ、ウニはウニで食べたかったw。特に前夜のセミエビが美味かったからなぁ。味はまぁ悪くはないのだが、ややコッテリ感が強く、場末の温泉旅館の夕飯の味と紙一重になりかけている。
食事は海ぶどう丼とアオサのお吸い物。これは美味しかった。特にお吸い物の香りの良さは〆として嬉しい着地に導いてくれた。素材の味わいをちゃんと生かしてある皿はちゃんと美味しいということは、素材自体は決して悪くはないということだ。
デザートは冷たいぜんざい。といっても新垣ぜんざいのそれとは違い、見ての通り我々にも馴染みのある形のぜんざいだ。上に乗っているのは沖縄の定番ブルーシールアイス。そしてその上にかかっているのは、最近発売されたという雪塩ちんすこうを砕いたもの。あずき以外は全部既製品という大胆さがとてもいいw。確かに甘みの強いブルーシールアイスに塩ちんすこうは合っている。そして小豆はちゃんと上品な味付けで、ブルーシールアイスのくどさを和らげている。作曲家というより選曲家的なセンスを感じて、既製品を使ってもこれはこれで料理としてちゃんとした表現になっていると言える。
総じて、皿によって方向性のばらつきがあり、味の濃さにやや一貫性の希薄さを感じたものの、ジーマミ豆腐や田芋のコロッケ、最後のお吸い物などの素材の生かし方には十分以上の満足感を得られた。全てこの感じで供されたらかなり印象も違ったと思う。勿論値段を考えれば十分元を取ったと思えるのだが、また来るかと言えば現時点で気持ちは50/50だ。譚亭や山本彩香などを経験してからあらためて考えたい。
それゆえ、元は取ったものの、どうも釈然としない気持ちを引きずりながら宿にチェックインして、とりあえず仮眠をとってみたら、その気持ちの据わりの悪さはすっかり増幅していて、どうにもいてもたってもいられなくなり、再びハンドルを握り深夜ちかくに夜食を取りに向かったw。昨晩の店が閉まっていたら行こうと思っていた鶏料理の店である。