きしもと食堂@本部町
二日目の朝。本日の午前の部メインイベントはちゅら海水族館であるため、昨夜は那覇から移動して茶谷のリゾートホテルに泊まり、朝飯は食わずにそのまま本部町を目指した。朝食に政良さしみ店を選んだからである。ここを選んだ理由は今回行く他の店のように色々な情報を精査して決めたのではなく、たまたまこのとても魅力的なレビューを読んだから。一目惚れである。しかしそんな大幅な期待も空しく、早起きして訪れたにも関わらずやってない…定休日でないのは調査済みの筈だが…まぁ何となく予感はしていた。何せ『休日=風邪を引いたとき』という店であるw。その緩さに魅かれて敢えて選んだのだから、自業自得である。
流石に朝っぱらからやってる店も他になく、仕方ないのでちゅら海水族館へ直行した。飯はちゅら海内のテキ屋で不味いタコライスと油まみれのチキンレッグを食しお茶を濁した。二日連続で幸先の悪いスタートである。さてどう挽回するか…まぁ例によって予定より一食増やして帳尻合わすかw。
ちゅら海のスケールのデカさを堪能(食以外の事は後でまとめて)したあとは、失敗の朝を取り戻す為に早めのブランチ。もう一度本部町に取って返し、昨日に引き続き二杯目の沖縄そば、きしもと食堂に向かう。情報によると、こちらは創業100年以上になる、現在の沖縄では数少なくなった昔ながらの伝統的な作り方を守ってる店であるとの事。昨日のニューウェーブ感たっぷり(?)のそばと食い比べる事で、最短距離で沖縄そばを知った気になろうという寸法だ。それだけの歴史を誇る店ならば、美味かろうと不味かろうと、つけ麺における大勝軒のようにこれを一つの基準としても間違いはなかろう。沖縄そばの何たるかの片鱗でも見えてくれば幸いである。
流石に休日、辺鄙な所にも関わらず外に数人の行列が出来ていたが、回転は速くほどなく入店。雑然とした暑苦しい(しかしこの雰囲気は嫌いではない)店内で手ぐすねひいて待っていると、殊の外早く所望のものが登場。早速スープを啜る。うん、やはり一口目はカップうどんだなw。昨日のてんtoてんよりこちらの方がさらにジャンク感が強い、が、よりパンチがあってなかなか好きな味である。かなりシンプルな味の構成で、複雑化しすぎている現代のラーメンと比べるとやはり安直な味に感じるが、それがまた魅力でもあるのだろう。逆に妙に凝りすぎるとかえって魅力を損なうのかもしれない。
麺もそれに見合った食べ応えを持ったもので、とても力強さを感じる。さぬきうどんとはまるで違う方向性ではあるが、パワフルさは負けず劣らず。が、例えば午前中の田村や谷川米穀店のような、噛み締めた瞬間思わず踊りたくなる程の魅力があるかというと、そこまでは及ばない。まぁ比べるものではないかもしれないが。丼内での調和という意味では、スープとの相性も合ってて、これはこれで弄りようのない完成された味なのだと思う。
ただし残念ながら肉は好みではなかったなぁ。とにかく甘い。スープに味が溶け出さないように注意して食べざるを得なかった。これは昨日の肉の方が好みであった。
さて、これで二杯の沖縄そばを食したわけだが、今回のツアーではもうそばは食わない予定なので、この段階での沖縄そばの感想を述べておく必要があるだろう。とはいえこれで沖縄そばの全てが分かったなどとは全く思ってないし、とても一言ではまとめられないが、想像していたよりは遥かにジャンクで庶民的な食い物であるという印象は持った。これは良い意味でも悪い意味でもある。とても敷居の低い味であるが、100年以上もこの味を守り続けて店を継続してこれたという事は、とても素晴らしい事でもあり、一方で『100年もの時を重ねてこれですか?』という想いもないわけでない。東京であれば何らかの進化を強いられるだろうから、良くも悪くも沖縄という特殊な歴史的背景を持った離島ならではの事だろう。繰り返し日常的に食すに耐える味と言うのは普遍的でもあるが、また最大公約数的で単調な味であるともいえる。昨日のてんtoてんがニューウェーブな味だとしたら、かなり保守的な麺料理体系であるとも思えるが、それだけ動かしようのない、完成度の高い味であるともいえる。中華的な味の組み立てと和食的味の組み立ての良いとこ取りをしてるようにもみえるが、どちらにもなりきれない歯痒さみたいなものも感じる。総じて、文化と呼べる程の突き抜けたオリジナリティは残念ながら今の所感じる事は出来なかった。
しかし一方で、敢えて生意気な言い方をすれば『この方向なら、恐らくこういう方向でオリジナリティは出せるよなぁ』という可能性もひしひしと感じた。多分それは俺がまだ行っていないどこかの店が色々なやり方で既に実現しているだろう。そういう意味では、一見『これが沖縄そばの味だ』というような安定感がある一方で、まだまだこれからいかようにも進化のしようがある、先が楽しみな麺料理体系でもあると感じた。既に大層な歴史を積み重ねているにも関わらずである。つまるところ、現時点では俺がこれまでに体験してきた様々な麺料理と比較すれば発展途上、もしくは未成熟とは感じたが、これら二店を食しただけの現時点では到底満足出来なかったからこそ、また是非食べに来たいと強く思った。それはとりもなおさずこの麺料理の持つ強い引力に他ならないだろう。『俺別に他に美味い麺料理色々知ってるからもういいや』とは全く思えなかったのだから。
ということで、昼の部は終わり…ではないw。きしもと食堂を選んだ理由はこれだけではない。ここの目と鼻の先にどうしても行っておきたい店があったからだ。沖縄に来た事のある人ならもうお分かりだろうが、我々もご多分に漏れずその店とハシゴである。店を出て一服もせず、きしもと食堂の扉から文字通り直線でその店に向かう。
Comments
とても興味深く読みました。
的確なコメントはみごととしか言いようがありません。参考にさせて頂きます。
しばらくは沖縄へ行かれないとありましたが次回の沖縄飲食店情報を楽しみにしています。
きとしも食堂は先代からすると特にスープと肉の味はおちています。
てんtoてん系の生麺を出す、新都心のてぃあんだーが今一番のおススメです。
ありがとうございまさた。
Commenter: rootbeer7 | 2008年11月03日 16:22
rootbeer7さん;
コメントありがとうございます。内容から察するに沖縄にお住まいの方ですか? 的確と評して下さりとても光栄です。初めての沖縄で果たしてどれくらいの事が書けるか不安だったのですが、本当に行って良かったです。
てぃあんだー、次回訪れた時は是非行きたいと思います。
Commenter: pasta-man
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2008年11月04日 03:08