パスタマン上海を食らう 〜2日目昼食(その1)〜
結構しっかり朝飯を食らったので、流石になかなかおなかが空かないまま、タクシーで新天地に移動した後もしばし散歩。流石新天地、コジャレたお店が建ち並んでいる。俺はあまり興味は無いが、Annabel Leeなどのブランドショップや雑貨店を冷やかしながら、次の食事のために歩行の振動によってなんとか胃袋に隙間を作る....って、やはり旅として根本的に何か間違ってる気がする。普通は主従が逆だろう。
ちなみにこれが弊社上海オフィスが入ってるビル。周りはオフィスやホテル等、新たなビルが建設ラッシュ。今後ますます上海のビジネス拠点になっていくような雰囲気がプンプン漂っている。そんな中に、友人曰く『上海一美味い肉まん』を食わせる屋台があるという。周りのセレブかつハイテックな様相からはにわかに想像出来ないが、こいつが俺を裏切った事は無いので安心してついて行く事にする。
◆小吃その1〜肉まん
ハイテクビルの隙間にこういう店が並んでいたりするのが上海の面白い所でもある。手前がコンビニのような生活用品屋で、奥がその肉まん屋だ。漢字が難しくて書けないw。この時点で午後1時過ぎ。朝飯の小龍包は11時前に食べたので、もう少し歩きたいところだが、生憎ポツポツと雨が降ってきたので慌て気味に店に到着。この後もまだ食う予定が色々と詰まってるのでさっさと消化することにする。
店内に食う場所が無いので、小雨の中を歩きながら食す。巨大なものを思い描いていたので思ったよりは小さいが、手に持った感じは見た目以上にずっしり。餡の充分な密度感を想像させる。そして決して薄くはない皮を通して透ける肉汁が、その量を物語っている。値段は確か1.5元(大体25円)。
いやぁ、これは美味いわ。上海らしいちょっと甘めな味付けがたまらない。皮も餡も予想を上回るしっかりとした噛み応えで、俺の好みにバッチリ合ってる。これまで俺が横浜中華街などで食った肉まんとは次元が違うと感じた。こんな場所でバッチリ合ったって、むしろ帰ってから禁断症状が出て困るんだが、この至福は何物にも代え難い。俺的には、少なくともこの時点ではまさにコレを食いに飛行機に乗ってこんなとこまでやってきたのだという気持ちでいっぱいだった。
◆小吃その2〜牛肉餅
肉まんを食べ終わらないうちに、通りの並びにある次の店に到着。こちらは饅頭というよりは揚げパンというか、牛肉風味の餡をシナモンロールのように巻き込んで焼き揚げた、香ばしく歯ごたえのある総菜パンのような食べ物。通りに漂う香りが、俺の胃袋に更なる隙間を作る。
これは一個1.7元かな。これまた甘みと、様々な香辛料の利いた具が、見た目以上にカリッと香ばしい歯ごたえのパンと良く合っていて美味い。肉まんよりはおやつ感覚の食い物で食べ応えも幾分軽いが、この時点までの炭水化物摂取量は通常の一日分を超えてると思うので、流石に少々キツい。しかし肉まんと甲乙付けがたい魅力的な食い物だと言う事は確かだ。強いて言えば肉まんの美味さの方に軍配を上げるが、肉まんと比べて日本での流通量は格段に少ないだろう(俺は日本ではお目にかかったことはない)から、レア度で言ったらこちらだ。いずれにせよ、両方食って損の無いものである。二つ食っても50円ちょっとだしねw。
上海に来ると、常日頃俺が言ってる『価格と食の満足度は相関関係に無い』という事が良く分かる。上海にはこうした一個20円くらいの小吃だけでなく、一食15万円の超高級ディナーの店だってある。そのレンジの広さは恐らく世界一だろう。この旅でも後日10000円くらいのコースを食べてみるんだけども、それがこの小吃達の500倍美味いか?と聞かれれば、勿論それは違うと答える。そもそも食の満足度を価格で量るこの質問自体ナンセンスなのだが、この異様な価格差が成り立っている上海で色々と食べ歩いてみると、天の恵であるところの食という価値を、人間が勝手に決めた価格という物差しで量る事のナンセンスさを嫌でも悟るのだ。値段などという、ある意味一つも信用出来ない価値基準で何でも量ろうとする思想は、自然の恩恵を人間の力でどうにでもコントロール出来るという傲慢な考えに等しい。美味という価値を、100%人間の力で生み出せるわけなど無いのだから。
『安くて美味い店=良い店』というのも実に短絡的な思考だし、『金さえ払えば美味い物が食える』というのも想像力の欠如を感じる。少なくともこの異様な価格差の中で食べ歩き、色んな階層に暮らす人々を見ていれば、そんなスケールの小さい考えは簡単に吹き飛ぶ。この旅は、純粋に『食を楽しむ』事と、その『支払った対価に見合っているか』という事を自分の中でキッチリ分けられるかどうかが、本当に食という物を楽しむセンスが持てるかどうかの一つの鍵なのだという事をあらためて思い知る旅でもある。