パスタマン 上海を食らう〜1日目夕食〜
◆滴水洞@茂名南路
いよいよである。なにせ初海外旅行の初食事だ、気合いが入らないわけがない。その証拠にこの日は機内食しか食べていない。そんな状態で湖南料理とは、胃より肛門の方が心配だが、日本ではあまり知られていない湖南料理の美味さは既に深圳で体験済み。しかもこの日は友人Yの配慮で、彼とその部下達とともに会食ということで、種類も多く食べられる。この店は上海で湖南料理ブームを仕掛けた店として知られる有名店なので、果たして深圳で初体験した湖南料理とどれほど違うのか食べ比べる目的もあった。それがより美味いかどうかは分からないが、いずれにしろ初食事に相応しい店のチョイスである。流石Y、食に関しては俺が最も信頼する人間の一人である、敢えて初日は上海料理をハズしてこの店。その土地がどこかに関係なく、俺の一番気になってる事を優先する。分かってらっしゃる。
中国では、酒を飲まない俺はまずフレッシュジュースをまず頼む。こちらのジュースは本当にただ素材を絞っただけのもので、よくも悪くも素材そのままの味で、冷やしてもいない。だがそれがいい。土地によって色々な種類があるが、ここではスイカとキュウリ(!)とココナッツ(は缶だが)を頼んだ。この中で最も味の想像出来ないキュウリのジュースが、実は一番美味かった。本当にただキュウリを絞っただけのもんだ。それだけで飲んでも本当にただキュウリの味しかしないが、何故か不思議と辛い食い物と良くあう。スイカも同様だ。身体を冷やす効果が辛いものとの相性を高めているのだろうか。これは発見だった。
『この店へ来たらまずコレを食え』と言われていたスペアリブ。中国系の香辛料だけでなくコリアンダーシードやクミンなどカレーによく使われるスパイスまで使った、なんともスパイシー(not辛い)な一品。湖南料理はとにかく唐辛子、というイメージが強かったので、こんなに複雑なスパイス使いをするのかというのを知ったのがまず新鮮だった。脂は徹底的に落としてあるのでジューシーさは無いが、その分噛む程に凝縮感のある旨味が口に広がり、前述の香辛料と相まって複雑な旨味を醸し出す。流石看板メニューを張るだけの美味しさだ。
酸辣粉皮、つまり辛いビーフン。これも調べてるときから食いたかった一品。前菜のクセにここまで辛いとは、流石湖南料理。しかし辛さの中に中華ハムの旨味がしっかり生きていて、ヒリヒリくる辛さとプルプルの麺との対比がとても美味しい。冷たくて辛い麺というのは、蒸し暑いこの時期にぴったりの料理だ。後があるのでつまむ程度に控えたが、丼一杯でも食いたい一品。
ピータン豆腐は日本でも多くの中華料理屋で食えるが、ここまで辛い上に旨味が濃厚なピータン料理は流石に初めて食べた。豆腐もピータンに負けないくらい濃厚だ。後のために小皿で済ませないといけないのが歯がゆくもある。しかしここまで(まだ前菜だけだが)食べてきて、深圳で食べた湖南料理も美味かったが、流石に上海の有名店は違うとの認識をハッキリとした。まだまだ先があるので続ける。
これも前菜のキクラゲとキュウリの冷製。キクラゲは肉厚で歯ごたえがあり、キュウリの醤油&酢ベースのシンプルな味付けがさわやかな気分にさせてくれる数少ない辛くない料理であるが、さっぱりと明快な味付けで箸休めにちょうどいい。
これも名物、レンコンに餅米を詰めた前菜と煮豚。レンコンは他の料理とは違い少し甘めに味付けてあり、しっとりと煮込まれたレンコンにとても良くあっている。薄く切った煮豚はキュウリと煮た味付けで、醤油&酢ベースのシンプルな味付け。なんてことない味だけど、妙に美味い。きっとこれも余分な脂を削いで旨味を凝縮しているからだろう。
これぞ湖南料理の真骨頂、海老の串揚げ。以前湖南で食べた物はこんな事になっていたので『どーせいっちゅーねん』って感じだったが、こちらのは大きな海老を一本揚げしてあるので食べ易い上に味も数段上。深圳で食べたのはスナック感覚の美味さだったが、こちらのは旨味も食感もたっぷり豊かで食事としての美味さを感じる。しかし見た目以上に辛い。ともかくこれは殿堂入り候補の美味さであった。
これもこちらの名物料理、豆と挽肉の炒め物。豆は日本でいうと、インゲンというより岐阜名産の十六ささげのような長ーいもの(市場で見た)。味も十六同様にインゲンほど青臭くなく旨味がある。訪れる前に調べた段階でかなり期待を抱かせる見た目だっただけあって、それを裏切らない味。
さらに湖南料理らしい見た目の鶏肉の炒め物。日本人にとっては果たして唐辛子が具なのか香り付けだけの飾りなのか判然としないが、現地の連中も避けて食っていたので多分食わないのが正解なのだろう。しかし勇気を出して鶏肉と一緒に食べてみると、香ばしくて思ったより辛さも無く美味しいのだ。
これも今回の中で特に気に入ったカエルの炒め物。カエルは基本的には鶏と似ている味だが、鶏より断然美味いw。若干癖があるが、それがまたたまらないのだ。具のネギもまた、上記の鶏におけるニラ以上にいい仕事している。
なんの変哲も無いコーンの炒め物だが、日本のコーンとは若干味が違うようだ。粒も大きめだが、現地のスタッフに聞くと『これは上海のコーンとは違う。上海のはもっと粒が大きくて白い』と言っていたので、これでも日本に近いものなのだろう。日本の物より粘りと甘みを感じるので、日本のトウモロコシでこれをやるとおやつ感が出てしまうが、こちらのトウモロコシだとこれでも充分主食たりえる存在感がある。松の実とクコの実がまた絶妙なアクセントになっている。
これまた何の変哲も無い青菜の炒め物。金華菜と言ったっけかな? 名前はド忘れしたが味はハッキリ覚えてる。苦みが効いていてトロ味の感じられる優しい食感が秀逸であった。青菜の炒め物はたとえ湖南料理でも味付けは全土共通なのかな。日本で食べられる空芯菜の炒め物のような、ニンニクの効いたさっぱり塩味。
魚や肉など、見境なくごった煮にしたスープ。やはり中華の神髄はスープにあるような気がしてならない。イタリアンなどと違って中国では海の物も山の物も一緒くたして料理してしまうが、それが美味いのだから仕方が無い。ただし何でも一緒くたにすれば良いというのとは違うと言う事は、この一杯を食べれば良く分かる。ちゃんと旨味のバランスを、長年の歴史の中で見いだしたのだという事を思い知るのだ。
一応メインということになるのだろうか。街の湖南料理店の広告などにも大抵はこの料理の写真が使われてたりして、湖南を代表する料理の一つなんだろう。カチ割った大型淡水魚の頭に、一緒に煮込んだ色違いの2色の唐辛子をあしらった激辛料理。赤い方より白い方の唐辛子がハンパでなく辛い、というより痛い。良く煮込まれていて美味いんだけど、流石にバクバクは食えない。赤い方はまだいけるんだが。ちなみに辛いものが苦手な相方は、白い方は唐辛子じゃないと思い込んで思いっきり食って漫画のようにむせとりました。
この辺からそろそろ着地に向けて〆料理へ移行。まずは焼きそば。醤油ベースの味付けで思ったより辛くない。麺は既製品っぽいが、不味くはない。しかし今まで出てきた皿のように湖南の強烈な個性を感じさせるものでもない。日本人には食べ易い味だと思う。
水餃子も勿論ある。羊肉の餡で特に辛くはないが、やはりタレは辛い。餃子の方は旨味たっぷりでやや甘めな味付けながら美味い。皮のプルプル感が独特。
これは〆というよりデザートに近いかな。衣を付けて揚げたものはバナナ。熱々の状態で飴を絡める。見た目では分からないがもの凄く熱い。しかし熱いうちに食べないと飴が固まって食いにくいというジレンマをかかえた料理。そういえば深圳で食べた時はバナナではなく↓の餅を同じようにして食べていた。とにかく飴を絡めるというのが湖南スタイルのデザートらしい。
これが正真正銘のデザートかな。珍しく甘いタレ(?)に浸かった胡麻団子。甘いと言っても実にアッサリしている。前述の通り深圳ではこのようにして食べたが、俺はこちらの方が食べ易くて好きだ。飴を絡めるなら上記のようにバナナの方が好みである。色々なデザートの中からバナナと餅の二種類、俺が頼んだわけではないが、深圳で食べたデザートの料理法をこのように解体して楽しめたのはラッキーだった。これも食の神のいたずらか。様々な刺激的皿を経て、着地はとても興味深く終える事が出来た。
俺は別に激辛好きでもなんでもないが、人並みに辛いものは好きだ。最近ではすっかり辛い物好きが増えた日本で、この湖南料理が何故流行らない....とまでは言わないが、認知度が低いのかが分からない。日本で辛い中華といえば四川だが、これはそれだけ陳健民が偉大だということか?
四川と湖南は、同じように辛い料理といってもその味わいは全く違う。湖南は直線的でシンプルな辛味の中にも奥行きがあり、さっぱりとした後味。しつこさも中華にしては控えめに感じる。日本人にも大変相性がいい料理だと思うのだが。俺は麻婆豆腐は大好きだが、料理でいえば湖南の方が好きだ。一概には言えないが、四川に比べてより素材の持ち味を生かした料理に感じるからだ。
なにはともあれ、初日の初食事は質、両ともに大満足に終わった。コーディネートしてくれたYと、集まってくれた上に、お土産の月餅の詰め合わせまで持たせてくれたスタッフに心から感謝をしながら床に着く.....わけが無いではないかw。なにせ数年ぶりに俺とYが顔を合わせたのである。昔はとんかつ屋とラーメン屋を、5分と間を置かずハシゴした仲である。当然ハシゴだ、ハ・シ・ゴ。飲みではない、食いのハシゴだ。店を出てスタッフを早々に帰し、我々は次の目的地に向けてタクシーを走らせた。一日目はまだ終わらない。
Comments
こんだけ食ってまだ1日目の途中って・・・・
ビーフンがイカの刺身にしか見えません(笑)
飴絡めたバナナって水につけて(飴冷やして)パリパリにして食うヤツじゃないの?
Commenter: matsu
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2007年09月25日 10:51