幸楽@浜松
まるで、長年恋いこがれた想い人にやっと会えたような、一方的な想いを抱き続けてはや数年。ようやっとこの店に訪れる事が出来て、またこのblogにこの店の事を書く事が出来てとても嬉しい。ある種の達成感すらある。浜松といえばうなぎ(しかも訪れたのは7月だ)だが、そこは心を鬼にしてスルーしてでも行くべき店である。俺の中では滝ノ水のあさくらと双璧。東西横綱(両方中部だが)である。もはや俺の知る限り、都内でこの二店に勝る店は無いと断言してもいいかもしれない。
そしてこの二店のとんかつの傾向が、両極と言っていい程方向性が違う。北斗の拳でいえば(何故に?)、あさくらの、トキような細やかさ、繊細さに対して、幸楽のラオウのようなド直球のパンチ力。この二店を知っていると、たかが豚肉にパン粉をまぶして油で揚げただけの食い物の奥深さと幅広さを思い知る事が出来る。
写真はロースの松。噂に違わぬ迫力の外観だ。そして味も佇まいに劣らず迫力を感じる味。見事な薄ピンク色の断面に乳白色の脂、厚めでしっかりとした衣とラードの香ばしい香り。ただただ純粋に『まじりっけの無い上質の豚の旨味』を堪能させるだけの食い物と言った感じだ。美味いとんかつに共通の、脂の何とも言えない甘みもさることながら、赤身の弾力と味わいの濃さがハンパではないのだ。特に密度がありしっかり歯ごたえを楽しめるのに、すぐさまホロリと崩れていく食感の良さがただ事ではない。そして、しっかりめに揚げられて、噛むごとにラードの香ばしい香りが鼻に抜ける衣も実に秀逸。食べ進んでも最後まで崩れない。
最近のとんかつ屋で、ここまでストレートな、パンチ力のあるものを食わせてくれる店がいくつあるだろうか。ひたすら豚肉の持つ旨味だけを最大限引き出そうとする姿勢に、一種求道的な凄みすら感じる。健康ブームだかなんだか知らんが、油を植物性のみにしたり脂身をやたらとカットしたり、『軽めに』『食べやすい』傾向の店ばかりだ(軽くて食い易いものが食いたいなら、そもそもとんかつなんて食うなよって話だと思うが…)。だから人によってはこの店のロースはヘビー過ぎて辛いかもしれない。だが、純粋に豚の旨味を堪能したい向きにはこれ以上のお勧め店はそうない。少なくとも『とんかつでヒレは頼まん』っていう俺のような人は確実に満足出来る店だ。滝ノ水のあさくらはどんな食傾向の人(ベジタリアンは除く)にでも問題なくお勧め出来るが、この店は本当にとんかつ(それもロース)が好きでたまらない人にこそ勧めたい。
ちなみにこの店、繁華街の中にあって決して狭い路地裏にあるわけでもないのに、スゴぶる見つけにくい。店構えが小さ過ぎて素通りしてしまうのだ。そして店内も店構え同様狭い。7、8人座れば満席だ。決して食い易い環境ではないが、評判程接客の感じが悪い事も無く、むしろ黙々と無駄の無い動きをする親父さんの振る舞いに見とれて、時が経つのも忘れるほど居心地が良かった。勿論接待などには使えないが(とんかつ屋を接待に使う奴なぞいないか…)。
しかし、俺の心の両横綱の店が名古屋と浜松、つまり中部にあるというのはどういうことだろう。中部(つーか名古屋)でとんかつというと味噌かつが有名で、実際矢場とんのとんかつが全く美味いと思えなかった(叶の味噌かつ丼はなかなか美味かったが)俺にとっては、むしろとんかつ不毛の地という先入観すらあった。都内でも決して少なくない数の店で食べたし、勿論黒豚の本場鹿児島でも食べた。しかしこの2店以上に印象に残る店には出会っていない。かつて恵比寿にあって俺の心のNo.1であった、特吟餅豚ロースのかつ好も静岡が本店だし....中部のとんかつが凄いという話は今のところ聞いた事が無いのだが、結果的に見れば俺にとっては聖地と言える場所のようだ。
Comments
おおー、ついに幸楽行ってきたんですな。
中部のとんかつが凄いって話は聞いたことないですよ。
浜松のほかの店の噂も聞かないし、かつ好は東京来てから知りましたし。
そう言えば静岡には「蝶屋」という、静岡グルメ道(なんだそれ)では誰しも一度は行くであろう老舗中の老舗とんかつ屋があります。
(かなりパンチの効いたとんかつです)
Commenter: matsu
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2007年08月08日 16:55
そう言えば「かつ好」@静岡、なんか名前聞いたことは前々からあるんだよなーと
思って調べたら静岡在住時の近所の店で、だいたいとんかつはそこで食べてました。
って今知った。
Commenter: matsu
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2007年08月08日 17:35