'07 茨城縦断食い倒れツアー 〜その6:二日目夕食〜
◆二日目夕食:玉屋旅館@常陸大子
『温泉目当てで泊まった宿の夕食がたまたま美味しかった』という事は今までにもあったが、ハナから料理『だけ』が目当てでその宿に泊まった事はない(昼に食事だけ食べに行った事はある)。今まで宿と食事とは切り離して考えていたからだ。それは『宿の食事=半ば仕方なく食べるもの』という先入観があったからかもしれない。だから、こういうツアーをやる際には、宿は食事無しの安いビジネスホテル等に泊まり、夕食は別の店で食べるというのが常套手段であった。夕食も貴重な一食の機会、仕方なく食べる等という事は出来ない。
では仮に、食事しに店に入って、美味しい食事に舌鼓を打って、満腹満足になって店を出ようとしたところで、実はそこが宿で、そのまま風呂入って寝られると分かったら、これに勝る幸せはあるだろうか。今回夕食を取った宿は、そんな気分にさせてくれるところである。勿論あらかじめ予約を取ってるわけだから、知ってて行ってるんだが、宿のホスピタリティと比べてあまりに魅力的な食事にそう思わされてしまうのだ。『ここは、食事処ではあるけれど、どうしても泊まりたい人は泊まらせてくれる店だ』とw。ようはそれくらい食事が魅力的なのだ。
いい忘れたが、ここの名物は奥久慈軍鶏料理、特に軍鶏鍋が絶品だ。だが一番有名なのは、宿で食える料理よりも最寄り駅の常陸大子駅で買える駅弁『奥久慈軍鶏弁当』かもしれない。これも後ほど触れるが、駅弁にしとくのは勿体ないくらいのものだ。
では早速一品ずつご紹介。まずは先付けというかおつまみというか、この辺で取れたなめこと、これまた奥久慈名産の蕎麦の実を和えた小鉢。なんてことない料理だけど、しみじみと美味い。蕎麦の実のプチプチとなめこのヌルプリの対比が面白い。
山芋ともずくの酢の物。これも食感が小気味良く楽しく美味い。海のものと山のものの取り合わせもいい。特に山芋は味が濃くシャキシャキ。やはり山のものは山の中で食べたい。
次も山のもの。特に解説する事はないが、やはりシャキシャキとしていかにも山で採ってきましたという感じの香りがたまらない。しかし、とにかくこの宿の料理は量が多い。メインにたどり着くまでが一苦労だ。
こういう盛り合わせ、大抵の旅館で必ず出てくるよね。写真ではわかりにくいが、真ん中のは牡蠣だ。殻の上にホワイトソースをかけて焼いてある。まぁこの手のものはどこで食べてもそれほど美味しいものではない。大体冷めてたりするし。あと不思議なのは、なんでこういう皿には甘いものが一緒に乗っているんだろうか。アンズとか羊羹のような和菓子とか、普通に乗っているのがどうも理解出来ない。手前左の緑と茶色お菓子は柚子の香りが効いて美味しかったけど。
お造り。初鰹とタコもいいが、刺身こんにゃくが乗っているのがこの辺りの旅館ならでは。慈久庵でも思ったけど、やはり刺身こんにゃく美味い。主役の鰹を食うレベル。
時期的にはまだ早いと思うが、鮎の塩焼きが出てきた。しかし意外な事に結構美味い。あまり期待していなかった所為もあるし、勿論泉屋の鮎に比べるまでもないものだが、それでも期待以上の味でなかなか。しかしこれでは、いくら俺でも軍鶏にたどり着くまでに苦しくなってくるぞ。
タコの白和え。この辺はやはり湯葉が有名なので白和えも風味が強く主張のある味。美味しいが、メインに控える軍鶏鍋が遠い.....
天ぷら。抹茶塩で食す。ここで特筆すべきは手前の山菜の天ぷら。こしあぶらかと思ったら鷹の爪(not唐辛子)という山菜らしい。これが青臭くて風味が強く野趣溢れる美味さ。少しの粘りもあってクセになる。海老はいいからこれを山盛り持ってきて欲しかったw。
長過ぎるイントロを片付けてようやくご本尊にたどり着いた。この時点まで鶏はおろか肉すら出てこなかったのは、演出なのか天然なのか分からんが、期待値MAX状態。これだけの焦らしプレイを食らっては、相当なものが出てこないと納得出来ないのだが、その過剰な期待をを上回る美味さ。実に滋味深い。肉質は弾力に富み、結構煮込んであるにもかかわらず旨味がいつまでも出続ける。いやぁ、待たされた甲斐があった。俺にとって鶏と言えば、そのまんま東なんぞに言われるまでもなく宮崎の地鶏が一番だと思っているが、いやぁ、奥久慈軍鶏恐るべし。そういやバードランドの鶏も奥久慈だったな。まぁいいけど。
もう既に腹はMAX状態なのだが、今日はこの後帰らずにこのままこの部屋寝ていいという、究極の贅沢環境の中で食べているので、一歩も動けなくなるのを覚悟で雑炊(つーかおじや)も注文。卵も当然奥久慈軍鶏の卵だ。もうね、今年は鍋年か?つーくらい素晴らしい鍋に出会い続けてしまって、来年以降が怖い。当然と言えばそうだが、この雑炊もとんでもなく美味い。薬味なんて邪魔なだけ。ただただ濃縮された上質の鶏エキスを味わい尽くす。ある意味究極の卵ご飯と言ってもいいかもしれない。
ここには他に焼き鳥やモモステーキ、刺身など、鍋だけでなく奥久慈軍鶏を楽しめるメニューが色々あるようなので、本当は倍払ってでも鶏尽くしコースを食べたかったが、何せ初めての場所なのでとりあえず出されるがままに食べてみた。次来るときは予約の際にメニューを色々リクエストしてから行ってみたいと思う。
ちなみにこの宿の風呂は一応温泉なので、(たたずまいは部屋風呂のようなので風情は無いが)なかなかいいお湯なのである。これだけの質の軍鶏(+朝食は後述)を食べて、そのまま部屋(まぁお世辞にも綺麗とは言えないが雰囲気はある)で寛いで、あげくの果てにそのまま寝られて温泉まで浸かれて、と考えると、温泉旅館であるという先入観さえ捨てればある意味究極の食事処と言えるだろう。鶏好きなら途中下車してでも行く価値がある。