和牛センマイと空豆とインゲンのジェノベーゼ
前回に引き続き、内臓メニュー。センマイは、知ってる人は知ってるが牛の4つの胃袋のうち3つ目の胃だ。イタリアでは結構ハチノス(センマイの前の第二の胃)、つまりトリッパと同じ扱いで使われる事もあるらしいが、それぞれの役割には大きな違いがあるので食感や臭みは見た目以上に違う。ハチノスは反芻胃であり、消化吸収はぜず食物を溜め込んだり戻したりして発酵させるのが目的なので結構な臭みがるが、センマイはハチノスから来た食物を選別するための器官で栄養吸収もするので、ハチノスと違って臭みも少なく淡白で、食感もあまりニクニクしい弾力はなく、まるで炭水化物であるパスタのようにブツブツと切れる。その他の第一胃のミノ、第四の胃であるギアラを順に並べてみると、ミノの硬質ゴムから、ハチノスやセンマイのタイヤのような内壁の質感を経て、殆ど大腸のように脂まみれでプニュプニュになるギアラまで、見た目や肉質の特徴がグラデーションのように変化していて面白い。こういう部位ごとの特徴が実に個性的でバラエティが豊富なので、その特徴を知れば知る程内臓料理というのは本当に楽しいものだ。
で、今回はそのセンマイの質感を利用して、下処理後にこの名前の由来にもなっている内壁のピロピロした襞を1枚ずつ取ってフィットチーネくらいの幅に切りそろえ、フィットチーネとは違いモチモチ感のあるショートパスタを合わせて、まるで種類の違うパスタを二種類合わせたような皿にしてみた。しかもどっちかっつーと肉の方がパスタっぽいというw。センマイの表面の黒いザラザラは、食感が良くないので取り除く(ハチノスとは違い茹でれば簡単に剥がれる)。ソースは、ハチノスと違って臭みも少ないのであまり気を使う事はないのだが、肉の臭みを上手く消してくれるジェノベーゼで。センマイの内壁のピロピロしか使ってないゆえに結構淡白なので、いつもよりグラナパダーノ(チーズ)を多めにした。また和える時に、前回のトマトソースで使ったモツスープを加えて少し旨味を加えた。合わせた野菜は定番のインゲン豆と空豆。見た目は緑一色(役満)だが、食感の多彩な楽しい一皿になったと思う。