イタリア料理マリーノ@沼津
市場を散歩したり、びゅうおに登ったりして腹を落ち着かせたあと、一旦ホテルにチェックインして一休み。仮眠をとって万全の準備をして、いよいよお待ちかねのディナーの時間である。今回は、前から気になっていた沼津御用邸近くにあるイタリアン、マリーノにしてみた。ここは駿河湾に浮かぶリゾートホテル、淡島ホテルのレストランで料理長をしていたご主人と、同じくそこでフラワーコーディネーターをしていた奥様が二人で開いた家庭的な雰囲気のリストランテで、HPを見ていると、料理は勿論、食、店に関わるあらゆる事に対する愛情が溢れていて、素朴ながらもさぞかし真面目で親しみやすい味わいが楽しめるのだろうなと、訪れるのを楽しみにしていた。沼津に来てまでイタリアンというのもどうかと思うのだが、そのHPから溢れる愛情に引き寄せられる格好となった。
店についてみると、やはりというか、住宅地の中にポツリとある、一軒家を改造したような想像通りの親しみやすそうな店の外観で思わず顔もほころぶ。店内も妙に気取りすぎず、清潔感もあってなかなかの雰囲気。これなら親しみやすくも実直な味が楽しめるだろうと、さらに期待も膨らむ。メニューを見るとコースが3種類ほどあったが、初めてなので一通りのメニューを試そうと思い、アラカルトにして相方とシェアすることにした。
まずは前菜3種。ホウボウのカルパッチョとタンのマスタード和え、それにアンキモの冷製。魚は流石に新鮮。甘くねっとりしたホウボウ独特の食感がたまらない。レモンが少し多めに絞ってあったが、これほどの鮮度なら香り付け程度でもいいかもしれない。タンとジャガイモのマスタード和えも、味は良く染みて滋味深く、一見この三つの中で一番重そうに見えるが、実は見た目以上にサッパリしている。何しろジャガイモがやたらと美味い。これも自宅(家庭菜園)で採れたものだろうか。臭みのないアンキモの上にマヨネーズがまんま乗っていたのは少し驚いたがw、意外と悪くない。うん、これは期待以上かもしれない。作り手の実直さ、生真面目さが出ていてやたらと説得力のある味である。
そして本日一番驚いたというか感動したのがこのミネストローネ。HPを見るに、ブロードには特にこだわりがあるようだが、そのこだわりは十分に感じられた。複雑さはなく、ただひたすら『いい塩梅』で取られたダシは、どんな具材を合わせてみてもブレる事が無いであろう強さを感じる。しかし味わいは淡く優しい。うーん、『今すぐ取れ』と言われてもとても無理なブロード(当たり前)。頑張って早くこのレベルの出汁が取れるようになりたいものだ。
そして、そこに浮かぶ野菜達のまた美味い事。ほとんどが自家菜園で採れたのであろう事を考えると、本当に夫婦が一致団結してこの味を作ってるのだと言う事が良く伝わる。やはり愛情無くして美味いものは作れんという事だ。どこまでも勉強させられる。
さらに、この中にひっそり入ってるパンチェッタ(つーか燻製かけてるっぽいのでベーコンかな)がまた凄い。こんなコマギレなのにやたらと主張する旨味。帰ってきて改めてHPをよく見て知ったが、これも自家製・・・うーん、恐るべしマリーノ。魚介系のスペシャリストかと思って来たのに、肉野菜系でこれだけ驚かされるとは正直思ってもみなかった。これを食えただけでも来た甲斐があった。
そしてお待ちかねのパスタ。ここの手打ちはこのタリアテッレ・ベルディ一本のようだ。それも珍しいね。肉野菜系のスープを堪能した後なので、ここは一転、駿河湾名産のアカザエビでしょう。適度にグリルされたスカンピは、流石に身もプリプリで甘くて美味い。ソースの方はあまり海老の旨味が入ってないようだけど、パスタの方も見た目程主張しないものなので、バランスという意味では取れてると思う。恐らくセモリナ粉を使ってないか、使ってても少量なのだろう。まぁ個人的な好みでいえば、パスタもソースもより主張があって強い方が好きだが、これはこれでアリなのだろう。
プリモ二品目(なんだそれ)のリーゾ。バカラ(イタリアの棒ダラw)とトマトソースで。今度は逆に魚介のリゾットにしては少し重めに感じた。マンテカーレ時のバターが多いのだろうか。俺はいつも魚介のリゾットの時はバターでマンテカーレしない場合が多いので、それに慣れてるからかな。それか昼のB級食で満腹になったのがまだ尾を引いてるのだろうかw。勿論この店の事なので結果としては美味しいのだけど、あえてオイルだけで仕上げてくれればもっと好みだったかも。
セコンドピアットも魚介。『本日の鮮魚料理』とあったので、『何?』と聞いたら『マトウダイのソテーをポルチーニのブラウンソースで』というので即注文。マトウダイいいよねぇ。身はしっかりしてて旨味も濃く、白身ならではの上品さもあって、実にバランスのいい美味さ。見た目は、体にデッケェホクロがあってひょうきんだけどね。ちなみにそのホクロが『マト(的)』に見えるからマトダイ=マトウダイというらしい。
果たして、ここで出てきたモノも流石地物という味わい。美味いー。マトウダイ自体はシンプルな味付けなれど、濃厚なポルチーニのソースにも、素晴らしき付け合わせの野菜にも全く負けてない。やっぱ魚港近くのイタリアンはこうでないとな、という面目躍如の一皿でした。
締めのデザートは、秋らしく栗のジェラートのクレープ仕立て。まずクレープをドレープ状にして立体感を出した見栄えがなかなか美しい。しかし昼の影響もあって、この時点で俺は流石に満腹で、相方のを一口もらっただけだが、味の方もなかなかに美味しかったです。しかしギブアップ。
いやぁ、勿論それなりに期待していったのだが、見事に期待以上のお店でした。素朴さの中の説得力。要所要所でキラリと光る自家製食材たち。『自家製の○○を使用』を自慢にしてる店は少なくないが、ここほどそれに所以を感じられる店もそう多くはないだろう。そしてメインのマトウダイやパスタのアカザエビから伺える、沼津ならではの魚介の美味さ。ここに来ないと味わえない魅力が満載だ。パスタはやや期待はずれだったが、それは俺がパスタだけに異様に五月蝿いという、ある種偏った価値観の持ち主だからだという事だろうw。とにかくまた是非訪れたい店だ。
さて、非常に満足して帰りがけに温泉にも浸かり、すっかりリフレシュして明日は朝からまた市場に繰り出し、いよいよメインイベント、沼津の魚介を寿司&天ぷらで堪能する。