魚河岸丸天@沼津
海が見たくて、沼津に行ってきた....といっても、俺の場合『海が見たい=漁港が見たい=並んでる魚が見たい』という意味なので、全くもってロマンのかけらも無い。連れて行かれる人間にとってはたまったものではないのだ。もっとも、色気はなくても食い気はある。景色のいい場所は調べなくても、魚の美味い店ならかなりの気合いで調べる人間だ。最近では婦女子にすら花より団子の方が人気があるらしいので、なんら憚られる事なく人を漁港に連れて行く事が出来る。何故なら、漁港では新鮮な美味い魚が安くたらふく食えるというイメージ(ある意味本当、ある意味幻想)があるから。
沼津の港は、俺が知る限り地方ではかなり観光地化が進んでる(つまり素人に優しい)港だと思う。祭日だろうが休日だろうが店はやってるし、早朝から夜まで何かしら食べる事が出来る。ただし市場内で新鮮な魚介を安く買おうと思っても、川崎とは違い残念ながら一般人には売ってくれない。そこが残念ではあるが、市場の威勢の良い光景というのは見てるだけでもアガるものである。その辺を楽しめとは言わない、許容してくれさえすれば、この沼津には寿司屋をはじめいいお店が色々あるのだから、デートにも十分使えるハズである。まぁここがカップルで一杯になったらなったでまた気持ち悪いけど。
朝思い立って、店や宿をじゃらんで予約、昼前出発、午後2時過ぎには到着する。川崎インターから沼津港まで車で1時間ちょっとという距離ならではの荒技だ。免許を取ればこんな事も出来てしまう(まだ取ってないが)。
到着してまず最初に訪れたのはこの丸天。多分、この観光地化が進んだ漁港の中でも最も観光地化された店ではなかろうか。前に来たのが確か3、4年程前だから、随分久しぶりの訪問だ。ここは、寿司だろうが天ぷらだろうが定食だろうが洋食だろうがとりあえず何でもある。味は完全に(よくも悪くも)B級だが、俺は結構好きなのだ。今回は久しぶりというのとblogに紹介するという前提があるので、ここの名物というか、看板メニューを頼んでみた。
まずはこの季節、生桜海老でしょう。フレッシュは駿河湾でしか、しかも4〜6月、10〜11月しか食べられないからね。この時期であれば大抵フレッシュが食えるので、A級の店だろうがB級の店だろうが関係ないw(まぁそれでもタイミングによってはハズレひく時もあるけど)。この甘みと食感は冷凍では味わえません。今回は殆どこれを食いにきたといっても過言ではない。基本は酢醤油だが、いつも半分ぐらいは何もつけずに食ってしまう。それほど甘い。
まぁこれも上とセットみたいなもんだな。こちらは桜海老と違って禁漁時期も短いし近くの相模湾でも穫れるので、桜海老に比べれば相対的にレア度は落ちるが、フレッシュが両方楽しめる時期は限られてるので当然頼みます。これは味というより食感を楽しむものだと思うけど、やはり俺にとって年に一度は食べておかないといけないもののうちの一つである。
この店は多分これで有名になったんじゃなかろうか。何度見てもセンセーショナルな外観。そして凄いボリューム。かつて単品でも頼んだ事があるが、やはり俺はかき揚げ丼で食うのが好きだ。かき氷のように上から天つゆをかけて、上から崩しながらご飯と一緒にかき込む。姿形に似合わず食感も楽しく、B級な魅力満載の一品である。別に何度も食わなくてもいいが、沼津に来たら一度は食っておきたい。
これもメニューのトップの方に書いてある人気(?)メニューのマグロテールのシチュー。これまた凄いボリューム。今回初めて頼んでみたが、一人で食いきれるのか?これ。味付けは、洋食というよりむしろ中華のようなスパイスの効き方で、やたらと甘みが強くなんとも摩訶不思議な味のシチュー。かなり好き嫌いの分かれる味だろう(俺にとってはとても好き好んで食う味ではない)。だがマグロのテールというものの凄さというか、これほんとに魚か?という脂の乗り具合は堪能出来る。そういう意味では、頼むならテールのステーキの方がいいかもしれない(頼んだ事は無いが)。何しろこんな特異なシチュー、多分マグロ以外の魚では成立しないだろう。オリジナルという意味では確かにオリジナルなので、一度は食ってみてもいいかもしれない。強くは勧めないがw。
なんというか、沼津でこの店に入るという事は、俺にとっては一種の儀礼的意味合いを持つ。ここの妙にインパクトのある、当たり外れが著しく激しいwメニューは勿論、ざっくばらん過ぎるばばぁの接客とか、活気ある店内の喧噪具合とかに触れると、『ああ、沼津にやってきたなぁ』という感慨が溢れてきて一気にアガるのである。
ただし注意点を二つ。まずこういうデカい所帯の店で刺身系はなるべく頼まない方が良い。タイミングによってはひどいのが出てくる事がある。ある程度この駿河湾で穫れる魚の種類と旬を知って、その上で確実と思えるなら頼んでみてもよろしいかと。そして、普段どんな飲食店に対しても、その土地や店の空気も読まずにやたらと接客がどうのと文句を言って、『金さえ払えば何でもしてもらえるだろう』という思想の輩は、気分を害すだけなので近寄らない方が身のため。こういうガサツさを『漁港ならではの活気』として余裕を持って楽しめる人なら行っても大丈夫でしょう。
さて、ひとしきり港を見て回ってホテルにチェックインしたら、次は駿河湾の魚介が堪能出来る(ハズの)イタリアンでディナーとシャレこもう。