深圳出張報告その3〜『湖南料理編』
中国本土で湖南料理を食べるのは初めてなのでかなり期待して臨んだ三日目のランチ。日本では殆ど知られていない料理体系だけど、以前台湾で食べたときは素材の生かし方や四川より直接的な辛さが結構気に入った記憶がある。自分の中では日本で言う京料理のような創意工夫を感じるのだ。それは暑く湿気も多い上に海を持たない土地だからこその、限られた食材から如何にうま味を引き出すかの創意工夫でもある。山の幸、川の幸が多いのもその土地柄ゆえだ。
湖南料理といえばまず辛さというイメージであるが、同じ辛さが売りの料理でも四川とは違う。四川は『麻辣』、湖南は『辣』である。つまり四川は山椒と胡椒の刺激、湖南は唐辛子そのものの辛さ。辛さレベルでいえば湖南の方が辛いというのが定説のようだ。湖南の人はそれを自慢にしているらしいw。
まずはこのお茶から全てが始まる。8つの味が入っていて、自然な甘味がある。面白いのは飲み方で、具(?)を口の中に入れないために蓋をしたまま飲むのだ。無くなったらお湯を足してもらって食事終了まで飲み続ける。ちなみにお湯を足す専門の給師がいて、その注ぎ方がなかなか無茶で笑える↓
写真だと距離が分かり辛いが、かなり離れたところから注ぎ入れる。このときはこの兄ちゃんの他に女性が交互にきたが、このなべやかんのような兄ちゃんはこぼしまくって下手だった。円卓なので離れたところからでも入れられるという事なのだろうが、だったらもう少し上手く入れろよw。
そして最初に口にしたのは意外にも昆布だ。海のものの中でも保存が効くので使われるのだろう。調理の仕方も結構日本のものに近い。
いきなりこれ。川魚の頭の煮込み。煮込みという程煮込んではいないが、早速湖南ならではの辛さ。味少し塩っぱいが旨し。こっちの人は皆辛いのが大丈夫かと思えば、総勢8人程の中で一番辛いのに強いのは俺だったw。
定番青菜の炒め物。高菜のような食感と味。ここでは細かく刻んであり、油も少しきつめ。スープ感は薄い。
根菜や鶏肉を煮込んだスープ。滋味深く流石の味。中国料理はやはり何処の店でもスープに感銘を受ける。天龍のスープも美味かったが、あれより地味だけど、実に深みのある穏やかな味。
おっとここでも登場肉豆腐。味付けも何もかも前日の広東料理と殆ど同じ。こちらの方がスープの濃度が低く塩が少し濃いかな。両方甲乙付け難い。
出ました。いかにも湖南料理らしい見るからに辛そうな海老の串揚げ。川海老を串に刺して大量の鷹の爪と一緒に揚げただけのストレートな料理。写真じゃ海老が殆ど見えないわな。でも揚げてあるんで唐辛子と一緒にガリガリ食っても見た目ほど辛く無い....つっても結構な辛さだが、この香ばしさはクセになる。酒のつまみに最適なんではなかろうか。
ホタテ。これも似たような調理法で出てたね。こちらのはやはり広東バージョンに比べてピリ辛。そして味付けも濃くニンニクも凄い量。どうも湖南料理は広東に比べて全体に塩味きつめだ。でもそれが嫌じゃないのはやはりうま味の骨格がしっかりしてるからだろうか。
さっきの海老の豚バージョン。ここまで揚げなくてもいいだろうというくらい揚げてあるのですこしパサパサ。しかしそれゆえしつこくなく、つまみとして秀逸な感じ。この時点で口の回りはかなりヒリヒリしているが、不思議と止められない。
この日のメインかな。淡水の蟹かと思ったら海水の蟹だそうだ。お客さんの特権でボディをもらい、心行くまで旨味を堪能。しかしこの日一番辛い料理で、流石に俺でもちょっとむせたw。
なんとなめこである。しかも冷製。火照った唇を冷ますのにちょうど良い味。ちなみに白いのはゆで卵の白身。不思議なほどよく合う。このアイディアは使える。
この日ダントツで気に入った料理がこれ。写真にエフェクトをかけてるわけではなく実物もこんな色だ。皮を残して身を剣山状に切れ目を入れ、衣を付けて揚げて裏返すとこんなインパクトのある形になる。身のホクホクと皮の香ばしさに甘酢のタレが良く合う。この形状なのでタレが良く絡まって美味い。ちなみにこれが出てきた瞬間皆俺の頭とそっくりな事に大受け。
〆に突入。麺を頼んでくれた。麺と言っても味がついてないただの麺。どうするかというと、
こうしてこれまで頼んだ料理の残りのスープに絡めて食べるのだ。これがなんとも美味い。特に蟹の出汁が濃厚なスープとの相性は抜群。とても辛いけどね。
そして最後はデザート。胡麻と水飴を絡めた餅である。こちらでは祝い事などがあると必ず出るらしい。胡麻団子と違ってかなり小振りで餡も入っていないため、するすると沢山たべられてしまう。気がつくと水飴のお陰でかなり喉が渇く。実に危険な食い物だ。
ということで、深圳出張報告は以上である。他はホテルやどうしようもない和食だったので詳しい事は割愛(このあとのおまけ編で少し触れる)。4泊したわりには数が少ないが、あくまで仕事で行っていたのでこんなもんだろう。とにかく、以前香港返還前に行った時とは雲泥の差であった。流石に中国でも屈指の所得レベルの高い街である。別に食を求めてくる場所ではないだろうが、来れば来たで香港のようなノリで意外と楽しめる街になったようだ。しかもこれからまだまだ発展していきそうな熱を感じた。また5年後とかに行ったら見違えてるんだろうなぁ。そういう意味ではとても楽しみな街である。