深圳出張報告その1〜『広東料理編』
中国広東省の深圳という土地は、日本人にはそれほど馴染みの無い都市ではあるが、実は中国では香港、マカオを除けば市民の平均所得中国No.1の工業都市である。その大きさに加え立地的にも香港に近く(海外から最もポピュラーな深圳への行き方は、香港から船である)、独自の食文化が発達しているわけではないが、広東料理を中心に湖南や四川など幅広くそれなりのレベルのものが食べられる。
まぁ別にグルメ目的で行くような場所ではないし、今回もあくまで仕事で行ってるので自分で選んだ店でもないのだが、このあいだのマレーに続いてなかなか美味しいものがたらふく食べられたのでご紹介しとこうと思う。
その前に、折角だから中国料理を少し勉強してみよう。日本で中華というと主に広東、四川、上海、北京の4大料理が有名であるが、本国では山東料理、四川料理、 湖南料理、安徽料理、江蘇料理、浙江料理、広東料理、 福建料理の八大料理体系が一般的である。山東は北京料理の原型と言われる。四川と湖南は共に内陸で湿気も多く暑いので辛い料理が発達。安徽は煮込みや遠火焼きなど火使い方に優れ、浙江は新鮮な魚介の素材を生かす。広東は中国一の豊富な食材を多めの油で薄味に仕上げ、福建は南方系のトロピカルな味付けが特徴。と、言う感じ。これをさらに細かく分類していく事も出来るらしい。そういう意味で最初の4大料理の分け方は、どれも細かい料理体系の集合体で、例えば上海料理というのは、その辺りの料理を十把一絡げに括った大きな料理体系なので、その土地に根ざした料理というのとは違う。乱暴に言えば大阪、京都、神戸辺りの食文化を全部まとめて関西料理と呼ぶようなものだ。つまり実際には上海料理の各皿にはそれぞれ別の伝統が受け継がれている事が多く、それが深みになっている。
一方で、例えば北京ダックや麻婆豆腐のようなクラシックとも言える料理は、中国でももはや料理体系を超えてどの土地でも食えたりするし、その一人歩きした料理がその土地の色んな影響で独自色のある料理に進化したり(例えば日本だとお好み焼きとか?w)、飲茶というある意味横串のスタイルもあり、伝統と進化が複雑に絡み合って体系をなしていて、知れば知る程中国料理の奥深さに驚く。
今回訪れた深圳は広東省なので、当然広東料理がメインだが、湖南料理もよく食べられる。今回はその広東と湖南料理、そして飲茶(まぁ広東が発祥だが)を楽しんできた。まずは第一回の広東料理編である。二食分まとめて乗せてるのでかなり多いにも関わらず、良くわからない素材も多々あるのであまり勉強にはならんけどw、まぁ気楽に読んで下さい。
ド頭に何故月餅か。この時期(中秋節)の中国では月餅を送る習慣があるらしい。中でもこの地方のスタイルは、ハスの餡と卵黄の塩漬けが入った月餅が伝統的なスタイル。ハスの餡はともかく卵黄の塩漬けは、正直日本人の口に合うような食い物ではないと思うが、食べ慣れると結構クセになる。しかしお土産にこのデカい月餅4つも持たせてくれたのは正直困ったw。
そしてコースが始まる前にお茶とともに何故か必ず出てくるのがこの鴨のモミジである。これは塩竈で蒸し焼きにしたもので、シンプルな味ながら深みがあって美味しい。これを手づかみでコリコリ食ってる姿はかなりホラーだがw、気づくと結構食べてしまう。
静岡で食ったナガラミのような貝を単に蒸したもの。こちらでもやはり竹串でクリンと器用に引っ張り出して食う。
これは名前をド忘れ。あっさり塩味の沢庵のようなw、食感がとても楽しい野菜である。日本でもたまに出てくるね。
中華の神髄はやはりスープだと俺は思う。この旨味の複雑さは世界一だろう。どんな具材を使ってこんな味が出来るのだろうと思っていたら、
具、というかダシガラを別皿で出してくれたw。これ単体では美味いとは言えないが、これだけの多くの食材を使う事であの旨味が出来ているのかと思って食べるとなかなか趣がある。海のものも川のものも山のものも全て一緒くたに煮込む行為はイタリアンではあまりやらないけど、こういうブロードでリゾットを作るのもまた面白いかもしれない。
これはいちいち書く事も無いか。見た目は単なるミミガーだが、味付けは深い。八角が良く効いてる。
これも良くわからない野菜だったなぁ。けど素晴らしく美味い。瓜のようなものだと思うが、卵黄を使ったソースというか味付けの濃厚かつあっさり感が絶妙。
巨大なカレイを広東らしい薄味で煮付けたもの。スケール感が分かりにくいがかなり大きい。魚自体は淡白だが、やはり油は多いので食べ応えあり。
これは名前は分からん(説明してもらっても中国の呼び名なので結局日本で言う何かはわからないw)魚を揚げた料理。分かるのは海の白身魚であることくらいか。見た目は美しいが、湾曲のお陰で身が取りにくいw。スープの味付けはカレイと一緒だが、揚げてあるのでこちらの方がより楽しい食感になっている。
豚のバラ部分を細切れにして炒めたもの。香草やスパイスでほんのりトロピカル風味。
これも油多めであっさり味で正当な広東風の炒め物。この野菜も呼び名がなんだか分からんが、巨大な菜の花のような野菜の茎の部分らしい。ブロッコリーとアスパラの中間のような味と食感で美味。
これはどの店でも大抵出てくるかなりポピュラー料理。ようするに中国風肉豆腐。醤油が効いてるので上海方面の味付けか?
中国高級食材の一つ、ホタテ貝。ニンニクと唐辛子とコリアンダーでアーリオ・オーリオ。
出ました北京ダック。味は大方の予想通りであります。ところで北京ダックには何故エビセンがつくのでしょうか。ご存知の方はご一報を。
小型の白菜のスープ。白菜の甘みと中国ハムの出汁が絶妙に効いたとても美味しいもの。
対してこちらはエビ味噌風味の辛く濃厚なスープ。具はなぜかシラタキのみだが、濃厚なので結構な食べ応え。
ワタリガニの炒め物。オイスターソース風味。一緒に炒めたネギやニラに蟹の甘みが染み込んでて、蟹そのものより野菜がうまいw。
これがメイン中のメインディッシュ。日本で見られる伊勢エビの倍はあろうかという巨大なエビ。これはバターがかなり効いた濃厚な味付けで、フレンチの影響が感じられる。頭からしっぽの先まで肉が詰まっていて場所によって食感や甘みが違ってて面白い。一皿1万円以上はするので、平均所得の高い深圳でも相当高級な一皿。
エビの下には伊面(ようするにパスタ風手打ち麺)が敷かれていて、実際にはパスタというより刀削麺のような食感だがソースをよく絡めてとても美味しい。俺もよくこういう男気あふれる盛り方をするので親近感わきまくりw。
もう一つ同じエビのアーリオ・オーリオバージョン。こちらは粉皮(フェンピン)のようなビーフンが敷き詰めてあります。これも美味い。
〆は定番のマントウ。揚げたものと蒸したものの二色で。ここの揚げマントウはきめ細かくて絶品でした。
マントウより気に入ってしまった一品。葱油餅(ツォンヨンピン)。通常はもっと薄くて大きくチャパティのような食感だが、ここのは葱の他に中華ハムを混ぜ込んでいてこれ一つでかなり満足度の高いものになっている。思わずお土産にもらってしまった。
断っておくがこれは一食分の量ではないよw。二食分です(ってそれでも多いかw)。あらためて写真見るとよくまぁこんだけ食ったもんだと我ながら感心してしまう。
実は10年前(香港の中国返還前夜という時期)にも来た事があって、その時は正直飯の選択肢も少なくどうしたもんかと毎日の食事に悩んでいたが、この店に限らずこの10年でものすごい充実ぶり。ここまで成長した都市も珍しいように思う。正直深圳での食事はあまり期待していなかったのだが、これからはあまり乗り気のしない出張でも落胆せずにすみそうだ。