'06 九州グルメツアー2日目〜『呼子のイカとパスタ会、そして久留米の夜食』
2日目は朝5時半にホテルを出て、昨日と同じ景色を見ながら唐津経由で呼子へ。この時点で既に一週間くらい居るような気分だがw、まだ着いて24時間も経ってない。この調子で5日間も持つのか段々不安になりながらも、朝8時前に呼子の土を踏んで目の前に広がる港の風景を拝んだら、そんな事はすっかり忘れて歩くスピードもスタイルも競歩のそれになっていた。
●呼子の朝飯:山下蒲鉾の魚(ギョ)ロッケなど
港に着いたら、何はなくともまず朝飯である。そのために、昨日の爆食が何も無かったかのように朝腹が減って目が覚めた(どーなってんだ、俺の胃は)にもかかわらず、ホテルのただ飯も抜いてきたのだ。最初に買ったのは、市場の入り口付近でおばちゃんが揚げていたイカ天。勿論揚げたてをそのままもらってきた。これがまた....二日連続の早起きでボーとなった俺の頭を一発でスキッとさせる強烈な美味さ! なんだこれは。のんびりムードの海辺のベンチに座ってゆっくり進む遊覧船を見ながら食う、何の味付けも無いただのイカ天は、どんな高級料亭の天ぷらにも負けない魅力溢れるものだ。まさに新鮮&揚げたて&風光明媚&おばちゃんマジック。高揚し過ぎて鼻血がでそうになったわ。
当然イカ天くらいで腹が落ち着くわけも無く、その並びにある山下蒲鉾で呼子の新たな名物(らしい)魚(ギョ)ロッケやエビ天(練り物のほうね)などをいくつか購入。これも港のベンチで海を眺めながら食す。
これがギョロッケ。まぁようするにイカ天(練り物ね)に衣を付けて揚げたものだ。しかし名物というだけあってなかなか侮れない。ジャンクな味ながらもふんわり香るイカの甘さと衣の香ばしさがなんとも合うのだ。通常の薩摩揚げより薄くしてあるゆえ、何枚もいけてしまう危険な食い物。出来る事なら揚げたてに当たりたい。
こちらは通常の海老入り薩摩揚げ。これは揚げたてに当たったので感動的に美味い。勿論イカ天同様環境効果もあるのだろうけど、食の満足度とはそうしたものである。だからこそわざわざ遠いところまで来て現地で食べる事に意味が生じるのだ。
まだ食うか! これは赤い粒が見える事からも分かるように、唐辛子入りだ。この季節にこの素材でこのピリ辛が合わないわけが無い。この辺でようやく腹も落ち着き、いざ食材探索へ赴く事に。何せトップの写真にあるように『日本3大朝市』を誇る呼子の市である。これくらいエネルギーを充填しなければ太刀打ち出来ないかもしれないではないか。意気揚々と市場通りへ向かう.....
●呼子の朝市でパスタ会用食材の仕入れ
が、 ショ、ショボい....。この俺の、無駄に上げたやり場の無いテンションをどうしてくれよう。しかしまぁ問題は規模ではない、中身である。ようは新鮮な魚介が必要数手に入ればいいのだ。連休の最終日の所為か、幸い客もそんなに多くは無い。いいところを他の連中に持って行かれる前にゲットだ!
まずは気の良さそうなおばちゃんに呼び止められて、小型だが活きの良さそうなアラカブを調達。安くしてくれた上に子供をおまけに付けてくれた。これは〆のアクアパッツァ仕立てのニョッキにする。親子のアラカブでアクアパッツァなんてなかなかお洒落な佇まいではないか。
続いて、(これでも)この通りで一番立派な生け簀を持つ魚屋で恨めしそうにこちらを見ているロブスターを発見し、迷わずゲット。これまで伊勢エビ、オマールでやってきた定番のトマトクリームソースで手打ちのパスタを作る。これで巨大海老はほぼ制したな。あとはスカンピくらいか。これは是非駿河湾に行って仕入れたいものだ。
そろそろ歩き疲れた(短いんだけど、何往復もしたので)頃に見つけた可愛らしいおばあちゃんの売る可愛らしい紫ウニをゲット。一個300円なり。『まぁ食べてみなしゃれ』と言うが早いか、器用にウニをパカッと割って俺の手のひらに乗せてくれた。が、サービスかと思えばしっかり料金にカウントしてるしw。流石に活きてるウニは、デパチカで売ってるのとはケタ違いの美味さやね。『6個くれ』と言ったら、1800円で9個(俺らが食った分含め)くれた。有り難いのだが、おばあちゃんは何も言わないので、果たしてこれがサービスなのか単にボケてるんだか結局良くわからなかったw。
結局この他に活きメジナと小型のヤリイカを5杯ほど買って仕入れ完了。実はアサリを忘れたのだが、気づくのはパスタ会も終盤に差し掛かった時の事であった。
●海中展望船ジーラ
これで必要な物は手に入ったし、あとは昼飯まで観光を楽しもうということで、呼子が誇る海中展望船ジーラに乗る事に。ジーラとはまぁ見ての通りクジラのジーラである。しかしなんとも舐めた外観だw。料金は大人一人2100円。水族館よりも余裕で高い。それだけ取るならそれなりのデザインを施してもらいたいものである。
そりゃ勿論海は綺麗だし、天気は段々よくなってくるし、乗れば気持ちいいに決まってる。でもそれが2100円の価値を持つかと言うとそういう事ではない。この船の最大の魅力は、デッキではなく船内にあるのだ。
上の写真に見えるピノのような小島付近に船が停泊すると、客は全員地下の船室へ急ぐ。扉を開けるとそこは天然の水族館!(って、俺はマリンピアの広報か)...って、いやこれ意外と興奮するんですよ。齢38を超えたおっちゃんでも。別に水族館にいるような珍しい魚が泳いでるわけではないんだけど、やはり天然の力というのは凄い。向こうの壁がない海で、手前に焦点を合わせると綺麗なクラゲが俺の理想とする生き方を体現してるし、その向こうにイワシのような小魚の群れ。さらに向こうからこっちへ行ったり来たりする鯛の群れ。地面をよく見ると蟹だか海老だかがセコセコ動いてる。種類別に水槽を区切ってない、リアルの海をそのまま切り取って目の前に持って来られると、幾ら見てても飽きないものである。
●いか本家@呼子
予想外の興奮に時を忘れたが、気づくと出発の時間まで1時間を切っていた。腹もこなれた事だし、いよいよもう一つのメインイベント、呼子のイカの活け造りを喰らいに行こう。ところが、事前に選んでいた本命の大和はおろか、さらに近場の河太郎でさえ、行けばバスの時間に間に合わない可能性が出てきた。やむなく朝市からほど近いいか本家に行く事にした。名前からして俺の"行くなセンサー"を働かせるに十分なセンスの無さを醸し出していたが、鮮度の高い活け造りが食えれば、初呼子の俺にはこの際どの店でも大した違いはなかろう。ここには生け簀もちゃんとあるし、ゲソの踊り食いなんつー面白体験もさせてくれる。それで十分である。
つーことで早速写真をば。う〜ん、流石に甘いね〜。プリッとした弾力ある歯ごたえも申し分ない。これはやはりどう頑張ってもなかなか東京ではお目にかかれないしろものである。これなら東京の周りのイカ好きの誰にでも自慢出来る。『いか本家』という腰砕けな名前さえださなければw。
美しい....。こんなに写真映えする食い物もそうそうない。この透明感を保ったままイカ墨パスタの具材に出来ないものだろうか....時間との勝負になるだろうが、いつか作ってみたい。
ついでにイカ以外の皿も2つ紹介しとこう。上が関アジのユッケ、下はもはや東京でもおなじみのイカシュウマイだ。昨日はハラミのユッケで今日がアジのユッケ。2日でこんな両極なユッケが楽しめるのもまた九州ツアーの魅力だ。イカシュウマイはもうあまり説明の必要も無いだろう。見たままの味であるw。後でお土産に買ってみて気づいたが、こういう糸状のイカを貼付ける他に、オーソドックスな形の皮で包んだイカシューマイもあるようだ。でもやはりイカシューマイというとこっちのスタイルの方が魅力的に見えるよね。
というわけで、仕入れも、観光も、グルメも、予想以上に楽しめた呼子でのひと時であった。最後におまけ映像をどうぞ。
さて、呼子から急いで博多行きのバスに乗り込み、とうとうあの男K君(意味の無いイニシャルトーク)の待つ久留米へと乗り込んだ。久留米には腹を空かせた久留米の仲間達が口を開けて待っているはずだ。かの地が近づくにつれ燃えさかっていく使命感に駆られ、興奮気味に久留米駅に到着した。
●久留米パスタ会
K君の自宅にたどり着いて準備を始められたのは既に午後4時を回っていただろうか。ここからは怒濤の準備&調理タイム。素材も違えば空気も人もキッチンも違う環境の中で、そしてなによりいつも以上に(?)期待の目を向けられている中での料理は、これまでよりさらに緊張し、さらに興奮するものであった。そんなわけでロクにゲストの皆と話せないまま時間だけが過ぎていく。キッチンとテーブルの距離はウチより近いのに、精神的にはいつも以上に遠く感じる。それは前述のような興奮の中で集中していた所為である。本当は皆ともっと話したかったが致し方ない。これが始まりなのだから、これから嫌という程話せるだろうと期待している。
来てくれた面子は、umfd君、さかっちょ君&★ERI夫妻、たろう&ちっこさん夫婦、K君のいとこのまい嬢、のりこ嬢、そしてK君&早葉ちゃん夫妻の9名(そういや誰もマイミク申請してくれないなw)。皆俺の想像以上に喜んでくれて、K君同様とても気の良い面子だという事だけは分かったのだが....何度も言うが、本当に無愛想な事で申し訳ない。今回の旅でそれだけが悔やまれる。今度は朝のうちに仕入れを住ませ、一日パスタ会に当てるスケジューリングで臨みたいと思う。また、パスタそのものも、いくつかのトラブルがあり100%満足のいく出来ではなかったので、是非リベンジさせて頂きたい。それをもって、K君夫妻や久留米の皆への感謝の表明としたいと思っている。
ちなみに作ったメニューは全部で7つ。慌ただしくて写真は撮っていないが、後日いくつかピックアップして(完全版として)作り直して、パスタメニューの中に個別にエントリーする。ちなみにこのblog始まって以来の写真を交えた)詳細レシピ付きを予定しているので乞うご期待。
●丸星ラーメン@宮の陣
さて、一つの大仕事をやり終えてホッとした俺が、緊張と興奮の糸が切れたとたんに腹が鳴りだすというなんとも分かりやすい男であるのは周知の通り。すぐさまK氏にお願いして夜食に連れ出してもらった。この時点で夜中の1時近く。当然梯子だw。まずは九州上陸後初となるラーメン屋へと向かう。初となればまずはベーシックかつその土地の王道的店に連れてってもらうのが礼儀(なんの?)というもの。それに相応しい店といえば昭和33年創業の老舗中の老舗、丸星ラーメンしかないだろう。いよいよ本物の久留米ラーメンが食べられる。夜中だろうが何だろうがこのテンション上昇は止められない。
老舗ゆえ、そして初めての久留米ラーメンゆえ自然と身も引き締まる。襟元を正していざ暖簾をくぐると、そこは俺の緊張感を完全に打ち砕くオッペケペーな腰砕け空間であった....一体なんだこれは。壁中に貼られた演歌歌手の宣伝ポスター、警察犬と思しき犬の写真と賞状の数々、メニューよりも何よりもでかい字で書かれた『皆様の交通安全祈ります』の文字....そして極めつけはある歌のフルコーラスの歌詞。タイトルは『俺の警察犬(と書いて"友"と読む)』『警察犬(と書いて今度は"オレ"と読む)は匂いの警察官』の二曲....おい、これは("本気"と書いて)マジなのか?
あまりの事に笑いをこらえるのに必死であったが、あまり深く突っ込むのもバカバカしいのでやめにして、何はともあれラーメンだ。そんな事より警察犬(オレ)は腹が減っているのだ。
この佇まいとこの香り。これぞ王道の久留米ラーメンなのだろう。特別濃厚でもインパクトがあるわけでもないし、感動的に美味いというわけでもないが、強力な説得力を感じるスープ。初めて食べる久留米のラーメンなのに、素直に『これが久留米ラーメンの原点なのだな』と思えてしまうのが不思議だ。そして具や麺においても、見た目はお世辞にも豪華とは言えない(むしろ今時寂しすぎる)のに、これ以上何も要らないと思わせられる不思議な完成度は何だろう。気づくとこの電波をひしひしと感じる内装にも違和感を感じなくなっているのだから恐ろしい。やはり継続は力なり、だ。長年続けてきた、生き抜いてきた事の説得力は、どんな小細工も太刀打ち出来ない事を思い知らされ、とてもいい勉強になった。そして楊枝をくわえながら再び暖簾をくぐる頃には、ラーメンそのものは勿論、内装やおばちゃん達の立ち居振る舞いに至る全てにおいて、尊敬の念以外は何も感じなくなっていた。
●てん屋@久留米
続いて向かったのは、K君いきつけのひとくち餃子の店、てん屋だ。どうやら昨日連れて行ってくれた店の中でテムジンを選択した事だけが悔やまれるようで、なんとしても久留米の餃子でリベンジしたいとの熱い思いからこの店に連れてきてくれたようだ。俺としては、美味い不味い以前に、テムジンで博多餃子の傾向と、因幡うどんと合わせて博多っ子の味の好みの方向性みたいなものを感じ取れたので充分満足であるのだが、こういう提案を俺が歓迎しないわけがない。当然腹には充分すぎる余裕がある。楽しみに店に向かった。
まず餃子の前に出てきた突き出しにノックアウト。ミミガーと苦瓜をゴマだれで食わせるシンプルな小鉢ながら、苦瓜のシャキシャキ感と濃厚なゴマだれ、ミミガーのクニュクニュした食感のコンビネーションが抜群の逸品である。こういうセンスを持つ店だ。これで餃子が期待出来ないわけがない。
しかしまだ引っ張る。なんてことないただのキュウリであるが、この店の看板メニューの一つらしい。なるほど、これもとても美味しい。ほんのり辛味とゴマ油の効いた、なんとも絶妙な味付けである。ごく浅く出汁か何かに漬け込んでるのかな? シャキシャキなのに奥行きのある味。シンプルだけど大変楽しい一皿だ。
おまっとさんでした(cキンキン)、これがメインの餃子達である。一口食って真っ先に思ったのは、『そう、これなのよ、これ』であった。テムジンで思った『もう少し主張を強くしたらいいのに』というのはこういう事であったのだ。上手い事説明出来ないけれど、全体の一体感を保ちながら、こちらの餃子特有のスルッと優しく胃に落ちていく個性も残しながら、焼き具合による食感のコントラストや粉の風味、具の旨味の強さや味付けなど、テムジンで『こういう方向性に進化するのがいいのではないか?』と思っていた餃子が今目の前にある。やはり一見の俺でも福岡の人間でも、より美味くするために考える事は同じなのだと思うと同時に、また一つ福岡の食文化への理解を深める事が出来たのかなぁと思うと、しみじみと嬉しく思う。
やはり今日も昨日以上に濃く、また昨日に勝るとも劣らない気持ち良さで一日を終える事が出来た。こんな旅なら一生続けたいものだなぁ、なんてこれまでの道程を反芻しながらホックリとした気分で床についたのであった。
Comments
スカンピ、来週末に静岡遊びにいこーかね、
なんてgrv氏と話してたんだけど一緒に行かない??
Commenter: matsu | 2006年07月24日 18:59
matsuやん:
お、いいねー。でも来週末は駄目かも。ひとみちゃんに引っ越しパスタ依頼を受けてるがな。
日帰りで買い付けてそのままエイジ邸直行でそのまま作るとかやりたいけどねw。
Commenter: pasta-man | 2006年07月26日 00:02