名古屋〜下島温泉〜養老ツアーその2 『松寿庵』
大変盛り上がった初日のメインイベントも終わり、一夜明けて昼食へ。前もって調べておいた松寿庵へ行く事にした。他にも、去年行った店だけど、角丸で味噌煮込みうどんもいいし、叶で味噌カツ丼も捨てがたいし、思い切ってあさくらまで足を伸ばすのも手かなぁ、など色々候補はあったのだが、基本的に新しいもの好き故の選択である。結果は想像以上に功を奏し、こんな遊びのついでのランチで、しかも名古屋で、ここまでキリッと江戸前の美味しい蕎麦が楽しめるとは正直思わなかった。今回はかなり当てずっぽうというか、確固たる信頼の置ける情報もないまま感覚的に選んだのだが、俺の嗅覚もまだまだ錆びちゃいないなという事が確認出来たのは収穫であったw。
この店にはどうやら4種類の蕎麦があり、どうしても全部試さないと気が済まない俺は、相方とシェアしながら4つ全部注文w。まずは定番の江戸前二八蕎麦である。太さは太くも無く細くも無く、香りも良い。そしてまずは何も付けずに数本噛み締めると蕎麦特有の甘みが口に広がる。この瞬間『当たり』を確信w。この店を選んであらためて良かったと感じた。
一方つゆの方は、甘みが抑えめでキリッと辛めの味で俺の好みドンピシャリ。出汁も醤油の強さと張り合うかの様にえげつない直前くらいまで効いてる。なのに角が立った印象はまるで無く、これは久々に感動もののつゆに出会ったぞ。素晴らしい仕事である。蕎麦の方が若干太めに感じたのは、このつゆに拮抗するためのバランス取りのように感じたが、とにかく絶妙のバランスである。こりゃ残りの蕎麦も美味いだろうな。
続いてこれがさらしなである。つゆの強さによって蕎麦の甘みがさらに引き立つ、個人的にはこのつゆに最も合った蕎麦だと思う。さらしなと銘打つ蕎麦にしては、俺の経験上若干太めだが、このつゆにはこれくらいが丁度いい。思わずあと3枚くらい追加しようかと思ったw。
次に生粉打ち蕎麦、いわゆる十割である。独特のブツンとはじける感覚がなんとも気持ちいい。風味も抜群。言う事なし。一番好きなのはさらしなであるが、この、蕎麦という食い物を満喫させてくれるこの生粉打ちも捨てがたい。もし行く人がいれば両方食え!w。それでこの店の真価が分かると思う。
4つ目は季節の変わり蕎麦、冬の柚子切りである。もうね、これつゆに付けずにそのまま食うのが一番いいんでないかな。口直し兼デザートとして一番最後に頼めば良かった。軽く塩を振ったたらの芽の天ぷらかなんかと交互に食うともう至福だろうねぇ(遠い目)。日本人としてのDNAががーっと目を覚まして、この瞬間だけは久しぶりにパスタの事を忘れたねw。
まだ食うよw。〆のかき揚げ天丼。つゆの味ですでに美味い事は想像出来ていたけど、そばのつゆとはちゃんと味付けを変えていて(当たり前かw)、これまた素晴らしい天丼である。海老もプリプリだ。これも文句の付けようが無いなぁ。もはや自分が名古屋にいる事すら忘れさせた。至福....
デザートの蕎麦豆腐。黒蜜で頂く。いつもは豆腐は最初に食うんだけど、『黒蜜も選べますよ』と店員さんに言われ、これは面白いと思い急遽デザートに変更。これがまた大当たり。甘さのかなり控えめな上品この上ない黒蜜と、蕎麦粉がかなり入ってパンナコッタのような質感になっている豆腐とのハマり具合が絶妙である。上に添えられた蕎麦の実のプチプチも絶妙のアクセントになってて、これも実に効果的。うーん、なんだかもの凄い綺麗に着地が決まったな−。そのとき脳内では荒川静香のオリンピックでの採点シーンが重なっていた。差し詰め、さらしなでトリプルアクセル、天丼でイナバウワー、蕎麦豆腐でさいごのスピンという感じかw。まぁこんな妄想が膨らむのも、目の前にいる人間の所為という話もあるがw。
これでもワタクシ以前は自ら蕎麦を打つ(今も道具はあるよ)程の蕎麦好きで、都内の名だたる店には大体足を運んだ。少なくとも杉浦日向子のそば屋で憩うに列記された店は殆ど行っている。後でHPを見て分かった事だが、この店はなんと、今は無き平井の名店、都内そば屋俺ランキング5本の指に入る『増音』に縁のある店ではないか! なるほど、嫌みギリギリまで出汁の効いたシャープなつゆはそこからか。どうりで美味いわけだ。恥ずかしながら増音が閉店したのを知ったのはつい最近の事で、この点からいかに俺が蕎麦から離れていたか分かるわけだが、そんな折に遠く離れた名古屋で偶然こんな店に出会えるなんて、これも日頃から食を偏愛していればこその運命かw。こんな、殆ど誰にも伝わらないドラマを感じつつ、次なる目的地に向かうため名古屋駅へ向かう。名古屋で世話になった皆さんありがとう。また必ず行きますのでお達者で。