静岡茶喫茶ちくめい@静岡駅前
静岡茶喫茶ちくめい。220年もの歴史を誇る茶店竹茗堂のやっていた本格的な日本茶喫茶である。以前、静岡出身のmatsuやんに初めてここに連れて行ってもらった時の衝撃は今も忘れない。今まで飲んでいた緑色の液体は果たして何だったのだろうか?と、したたか思い知らされた。この歳で本当のお茶の味を知っておいて良かった。
よくよく考えれば、『お茶なんて買うもんじゃない。ましてや外で金払って飲むもんじゃない』といわれるほどお茶が身近な静岡人にとって、『果たして、静岡で日本茶専門の喫茶店をやって需要があるのか?』という疑問はあった。実際静岡駅周辺にお茶屋は沢山あってもカフェ、喫茶と言ったらコーヒーばかり。そりゃ、静岡の人なら家に帰れば腐る程お茶あって、煎れ方も当然家ごとに拘りがあるだろう。俺のような観光客相手ならともかく、地元の人間に需要があるとは思えない。そんな背景もあったのだろう、ついこの間、静岡駅前のホテルアソシア静岡ターミナルの二階にあったこの店は、ホテルの改装にともない閉店してしまった。静岡の人のようなメンタリティの持ち主では無い俺にとって、この店は、『本当の』お茶を飲める店として、まさに砂漠のオアシスであった。これほど悲しい閉店もここ最近ない。その茶葉に合った正しい煎れ方で煎れた本当のお茶の味を最後にもう一度舌に焼き付けるべく、そして煎れ方を覚えて今後はそれを家で実践するべく、岐阜からの帰り道に高速を降りて立ち寄ってきた。実に閉店二日前の事であった。
良い茶葉で、正しく煎れた1煎目のお茶の持つアミノ酸の旨味というのは、他の飲み物には代え難い魅力がある。そして2煎目、3煎目と、徐々に旨味から苦み渋みを楽しむという飲み方も楽しい。このようにひとさじのお茶を最大限楽しむには、それなりの手順が必要になる。その手順をこの店では手取り足取り丁寧に教えてくれる。そのプロセスもまた楽しいのだ。あと二日で閉店のこの日も、前と変わらず丁寧に煎れ方を指導してくれた。
お茶を美味しく煎れるには、何よりもまずお湯の温度が大切だという。茶葉にもよるが、玉露なら50度くらい、高級煎茶( 竹茗堂でいうところの『わらかけ』)で70度ほどが最適な温度だそうだ。何故かというと、旨味成分のアミノ酸と苦み渋み苦み渋み成分のタンニンの引き出される温度がそれぞれ違うからだ。旨味と渋みが丁度良く引き出される温度が前述の温度だという事だ。玉露の場合、6,70度ほどのお湯を用意して、茶碗や湯冷ましに一旦入れて50度まで冷まし、この温度のお湯一杯分を茶葉7gとともに急須に入れ、1分半待ってから飲む。2煎目はお湯を冷まさずそのまま急須に入れ1分待ってから、3煎目以降は待たずにすぐ湯のみに注ぐ。こうして徐々に旨味香気から苦み渋みに至る味の変遷を楽しむ。
このように理にかなった煎れ方で飲むと、いかに今まで茶葉に対して可哀想な事をしていたのかと思い知らされる。本来こんなに美味しくなるハズだったのに、勿体ない事をしていた。今後はこの店で教わった煎れ方を思い出しながら、自宅で実践するしかない。コーヒーも烏龍茶も勿論好きだが、日本人に生まれた以上、生まれた土地に世界で最も上等なものが流通している日本茶を、本当の煎れ方で楽しまない手は無い。他の国の人間ではなかなか味わえない、日本人だけの特権なのだから。
話変わって、今年は二年ぶりに梅を漬けた。相方の実家の庭で穫れた大きな南高を、幼なじみが五島で作った塩で漬けた、文字通りの完全自家製梅干しだ。久々の梅仕事は実に楽しかった。このクソ暑い最中、嬉々としてお茶の事を書いていたら、なんだか無償にお茶漬けが食いたくなった。今晩はこの梅干しと頂き物のうかいのくみ上げ豆腐、そしてちくめいで買った玉露のお茶漬けにしよう。
Comments
ちくめいの最後を見届けてくれましてありがとうございます(大袈裟)。
県民なれど、正しい淹れかたでお茶飲むなんてなかなかやらない身だったんでここでお茶飲んだ時はボクもかなり衝撃受けました。
立地もイイし、手軽だし、イベント性もあるし、なにより美味いしでかなり重宝しました。
CKに喜んでもらえたのはやっぱりデカいなー。
県内にはまだいくつか日本茶だけで勝負してる喫茶店がある(らしい)ので、その辺も攻めてみたいところです。
Commenter: matsu
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2007年08月14日 18:53