中華そば伊藤@王子神谷
かつて食った店で特に印象に残ってるものを紹介する(いわゆるネタ切れ企画)"pasta-man classics"第二弾。この店で食って以来、めっきりラーメンを食う機会が減った。それまでは『お前、自殺する気か?』ってくらいのペースでラーメンを食っていた俺にとって、ある意味引導を渡された店とも言える。それほど俺にとっては美味かった。
店構え内装自体は商売をなめてるとしか思えないw。ちゃんとした建物なのに、海の家のような仮設店舗のごとき内装で落ち着いて食えと言われても無理な話である。多分あえてやってるのだろうが、そこにセンスと言うものは全く感じられない。商売っけの無さもここまでくると清々しい。
実際にラーメンを頼んでみても、内装同様実に素っ気ない佇まい。スープの異様な少なさ(別に麺が多いわけじゃない)、具の種類の少なさ(通常のラーメンはネギのみ...)、飾り気が無いにしてもほどがある。店内に入ってからこの丼が運ばれてくる直前まで、美味いラーメンが食えるなんて気持ちには誰もならないだろう。しかしこのラーメンが発する香りはただごとではない。強烈な煮干し臭。勿論店に入る前からこの香りは漂っているのだが、まるでこの一杯が、外にまで漂っている香りの元凶なのではないかと錯覚する程の強さである。これはさぞかし酸味とエグみの塊のようなスープになっているのだろうと想像させられるがさにあらず。勿論これだけ濃厚な煮干し出汁のスープであるがゆえ、多少のエグみ酸味は感じられるものの、この強烈な旨味に対してあまりにそれが少な過ぎる。このギャップは脅威だ。それも職人的な技や知恵で色々と小細工した挙げ句の成果というより(当然相応のノウハウはあるだろうが)、とにかく徹底的に上質の素材を選び、極限まで旨味を搾り取りましたというド直球の味。このスープの少なさも、もちろんコスト的な問題もあろうが、その濃厚さゆえに十分麺とのバランスが取れてると感じる。そしてその強烈なスープを受け止める麺も素晴らしい。粉の風味、コシ、滑らかさ、ともに俺の食ったものの中では最高ランク。初めて谷川米穀店のうどんを食った時と同様の衝撃を受けた。この麺が強力なスープをまとって口に入った瞬間に生まれる力の拮抗が、他の余計な具材の存在を許さないのだ。内装の見た目の貧弱さは失敗だと思うが、この一杯の見た目のショボさは、そのコンセプトを体現するものとして絶賛出来る。
事程左様に、ここの究極的にシンプルなラーメンを食うと、通常他のラーメンには欠かせないメンマや卵、青菜や海苔などの具材は全て『これ』が出来ないゆえの誤摩化しのように感じられてくる。当然ここのラーメンは苦手(というより嫌い)という人もいるだろう。ある方向に突出しすぎて、ラーメンとしてはかなり過激でアバンギャルドなものになってしまっているから。だから全ての人にお勧めするとはいわない。しかし例えば、貴方が音楽でいうところの"DUB"というコンセプト(もしくはアティテュード)に共感出来るのならwここのラーメンの中に一つの宇宙を見れるはずである。
Comments
classics企画、密かに楽しみにしてます。
この店で食べたとき、自分の中でのラーメンの到達点の一つを見た気がしましたよ。
ソリッド過ぎ+オリジナル過ぎ。ってDJ Premierのトラックかっつーの。
店構えは田舎の駄菓子系おでん屋@静岡に通じるものがあります。
Commenter: matsu
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2007年04月23日 20:19