'07『中部3県食い倒れ紀行』その1〜1日目の昼食
三重県、岐阜県、福井県などの中部地方縦ラインは、一般の関東人にとっては、こと食に関しては空白地帯とも言えるエリアだ。『美味いものは?』と聞かれても、なかなか応えに窮す。東京/神奈川から徐々に西に目を向けてみる。静岡にはお茶や鰻があるし、信州は蕎麦だ。多すぎる名古屋の名物は言わずもがな、金沢にだって日本海の新鮮な魚が穫れるイメージがある。そうして関東人の知識で段々と西に移動していくと、名古屋の次は、前述の県をすっ飛ばしていきなり京都や大阪になってしまうのだ。人によっては何処にあるのかすらおぼつかないのではないか。少なくともかつての俺はそうだった。
では、松坂牛、伊勢エビ、鵜飼い(鮎)、越前ガニ....という名前はどうだろう。勿論誰でも知ってる、日本の美味いものの代表のような存在ばかりだ。ところが、これら全て、上記3県のものだという事を知らない人は多い。勿論これだけではない。特に食に関して、関東の人間が想像も出来ないような高い文化があるのだ。さまざま人との偶然/必然の巡り会いによって、ここ2年くらいで、俺にとってこのエリアは、『最も印象の薄いエリア』から『食における最重要地域』に変わった。今回のツアーレポートの目的の一つは、この地方に馴染みの無い方々に、ここ数年で俺が思い知ったそのカルチャーショックの一端を見てもらう事にある。これから書くレポートを読んで、『今まで印象無かったけど、そんなに美味いものが沢山あるなら行ってみようかしら?』と思ってもらえればしめたもの。そのきっかけとして、手始めにこのレポートで、他のどの県にも引けを取らない、その地でしか味わえない感動を疑似体験してもらえれば幸いだ。
◆1日目昼食:岡田屋@住吉町の味噌煮込みうどん
新幹線で二時間もかからずに名古屋に着いてしまうと、(何回乗っても思うが)便利になったものだなぁと思う(じじいか俺は)。車内でいつもの崎陽軒の焼飯とシウマイをつついていれば、いつの間にか着いてしまう場所にもかかわらず、そこから名鉄でほんの三十分ほど南下し知多半島を下っていくと、まるで、まる一日くらいかけてやっとたどり着いたかのように錯覚する。それほど馴染みの無い土地に『なかなか美味い味噌煮込みうどんがあるよ』と教えてくれたのは、音楽仲間でこの辺り出身のデュオ、mimmaiの片割れであるマイちゃんだ。
味噌煮込みうどんといえば、山本屋総本家があまり好きではない俺にとっては、味噌煮込みの割には上品で洗練されている、東区泉の角丸が現時点でNo.1であるが、実際はそれほど多く食っているわけではないので、ネット経由では無い、こういう生の情報は大変有り難い。マイちゃんによると、かつて昭和天皇の時代に、さる皇族(名前失念)が訪れて大層気に入り、お代わりした上に麺を持ち帰ったというのだが、ネット上を探してもそんな情報は見つからなかった(それ以前にこの店の情報自体があまりないw)。まぁだからといってその店が美味いという事には全くならないのだが、普通そんな事があれば、店も積極的に宣伝に使いそうなもんだが、店内に入ってもそんな事は全く書いてない。そんなところにも、商売っ気の無さというか、肩肘張らずに地道に美味しいものを作っている感じが伺える。果たしてどんなうどんを食べさせてくれるのだろうか。このツアーの口開けの食事である。失敗は許されないw。
頼んだのは味噌煮込みうどんの上。並との違いはカシワが多く入ってる事のみ。一目見て麺が独特の佇まいなのがわかる。手で一本一本縒ったかのような、ねじれまくった手作り感あふれる麺。気になり過ぎたので、いつもは最初にすするスープより先にまず麺を手繰る....なんとも朴訥とした小気味いい歯ごたえの麺で、煮込みうどんとしてはかなり固めである。コシというのともちょっと違う歯ごたえで、何に例えればいいのか....思いつかないが、少なくとも今まで食ったどのうどんとも違うオリジナリティを有する。なのに何故か、噛み締める程に長い歴史(何のだよ)と伝統を感じる。なんとも不思議で美味しい麺である。なるほど、某皇族が持ち帰りたくなったのも頷ける。
一方スープの方は、鶏の旨味が支配的で、決して深みを感じるものではないけど、余計な味がしない直球な味わいでこの麺には良く合ってる。スープだけとれば特別なものは感じないが、この麺とくみ合わさる事で良い演出家の役割を果たしている。そしてカシワは、モモではなく胸肉なのにシットリと柔らかく、パサついたところがまるでない。割った卵とスープと絡めて食べるととても美味しい。
総じて、独特でオリジナリティの高いうどんなのに、おふくろの味のごとき安心感がある優しい一杯だ。とにかく麺が独特で、オリジナリティが高くしかも美味い。普通のうどんもあるようなので今度はこの麺自体の美味しさを味わうためにそちらも是非試してみたい....と書きながら、『何で二杯食わなかったのだろう』と今更ながら後悔しているw。俺とした事が、次の食事(夜)のために今食わないなんて、何故そんなに弱気だったのか。まぁ、結果的にはそれが正しい選択だった事が後で分かるのだが、今になってあの麺をもう一度味わいたい衝動に強くかられているのは確かだ。スープはそれほどでもないが、それほど中毒性の高い麺であったということである。ツアー初っぱなの食事としては上々である。
◆Free Ride Cafe@青山(愛知)〜海音(カノン)@住吉町の天然酵母パン
その後、前述のマイちゃんが店長になってオープンしたばかりのカフェが、ここから3つ目の青山という駅近くにあるという事なので、挨拶がてら寄ってみることにした。名前をFree Ride Cafeという(写真左上)。この日はまだプレオープンの状態で、今週の火曜(2/13)から正式にオープンしている。トレーラーハウス(?)を改造した黒っぽい外観の店なので直ぐ分かる。コーヒーも美味いのでお近くの方は是非行ってみましょう。
マイコの友達の沖縄ミュージシャンが作る賄い料理(写真左下。当然ソースはEGGOサラダドレッシング)や自家製シフォン(写真右上)などを堪能したり(折角サービスで作ってくれたのに、さっきうどんを二杯食っていたら多分食えずに不義理したただろう)、フレンドリーなお客さん達とまったり会話を楽しんでると、今晩ディナーのホスト役である泉屋の若旦那から電話。出てみると『パスタマンに食わせたいものがあるからバケット一本買ってきて!』との事。前日に行ってもらえれば相方が焼いていったのだが、生憎もう愛知県入りしている。そこでマイコに『この辺に美味しいパン屋さんない?』と聞くとここを教えてくれた。なんだ、さっきの岡田屋の直ぐ近くだ。有り難い事に、先ほど料理を作ってくれた沖縄ミュージシャン君(我がEngel's EggのE-Jimaさんそっくりw)に車で送ってもらい、急いでその店に行ってみる。外観は古民家を改造した趣のある建物(写真右上)で、期待出来そうなある種のこだわりは感じられる。まだ店は開いていたが、来る時間が遅かった所為で既に食パンが一個しか残っていなかった....。他に選択肢は無いのでそれを購入し、その足で次の目的地、岐阜に向かった。このパンのについては後述する。
さて、次はこの日のメインイベント、地元でもごく限られた人間にしか味わう事の出来ない、極上の鴨料理が待っている。向かう足取りも自然とスキップとなっていたのは言うまでもない。
Comments
新幹線2時間プラス名鉄30分で別世界!て素敵。今すぐ知多半島を南下したくなりました。
パンが気になる・・・
Commenter: モー | 2007年02月15日 11:05
一日目、楽しく読ませていただきました♪
maiちゃんの友達のミュージシャンのげんといいます。
よろしくです♪
いや~、岡田屋さん。早速行ってきますよ!!!!
Commenter: げん | 2007年02月16日 02:13
もー:
別世界というほどではないけどw、長閑でいいところよ。もっと南下すると綺麗な海があるし、温泉もあるみたい。そこまで行くには名古屋から軽く1時間以上はかかるけど。同じ南下するなら紀伊半島もいいよ! 三日目に登場するけど。
げん君:
おー、その節はどうも! 車出してもらって助かりました。中野のちむ屋、今度行ってみますよー。来月のライブも楽しみにしてます。
Commenter: pasta-man | 2007年02月16日 14:51