田なか@高津
学芸大学の夢呆には、『夢呆そば』という看板メニュー(?)がある。俺はこれが結構好きだ。『蕎麦本来の味と香りを楽しむ』という観点から考えれば、どう考えてもそれをスポイルする方向でしかないであろう蕎麦切りと大根、大葉の細切りとの組み合わせ。それらの野菜の香味にも負けないほど香りの高い新蕎麦に当たると、えも言われぬ新しい味わい、食感が口の中に広がる。逆に蕎麦の香りと味わいが薄くなる時期に食べても、小気味いい食感と清々しい薬味の香りに助けられて、特に夏には絶好のメニューである。この夢呆そばが、ウチからごく近場で食べられる事を友人から聞き、(もう一ヶ月以上前の話になるが)ちょっくら三つとなりの駅まで行ってきた。ちなみに隣の溝ノ口にも夢呆の支店(?)があるらしいが未確認。
狭い店内に入ると、休日の昼時なのにそれほど客はいない。そしてフロアの店員は板場のあんちゃんと『○○の女がさぁ〜』的な軟派な会話をデカイ声で話しているw。まぁ俺はズ太い方なのでアホな店員の会話もそれほど気にならないが、これで瞬間的にドン引きになる一見さんは多いだろうなぁ。そんで食べログあたりで『もう二度と行きません!(☆一つ)』なんて、全く腹にも頭にも足しにならない事を書いて鬱憤を晴らす、とても繊細な御仁も少なくないだろう(と思って念のため食べログに飛んでみたら本当にいたよw。リンクは張らないけど)。以下、ネットや雑誌上での昨今の食に関するレビューについて思う事多数あれど、関係ないので割愛。まぁどんな世界にも、『分かってらっしゃる』人もいれば何もわかっちゃいない人間もいる。何も食に限った事ではない。
まずは出汁巻き。出汁の旨味に頼らず、ストレートに卵の味わいで勝負という感じ。とはいえ、歯ごたえと味付けは決して褒めたたえる程のものではないが、この界隈では比較的高いレベルだろう。味的には電車でもう少し下ったよしみやの卵の方が随分上だが、シャッキリ鬼おろしでおろした辛味大根が添えられるのがなんとも嬉しい。
お待ちかねの夢呆そば。時期的には蕎麦の香り高い時期だと思うが、思ったより蕎麦の存在感が弱い。コシも喉越しも悪くはないのだが、香りと甘みが期待したより少ないのが残念。しかしこのメニューの凄いところは、それでも組み合わされた野菜の食感と香り、瑞々しさでグイグイ食わせてしまう事。本当の蕎麦好きならこういうメニューを評価してはいけないのかも知れないが、俺はそんなに頭の固い方ではないので十分楽しめた。惜しむらくは、新蕎麦の香りと味を期待して行ったのに肩すかしを食らった事くらいか。鮮烈な香りと甘みを持った蕎麦ならさぞ美味かったろうに。
蕎麦1枚では足りないので小天丼も。天ぷらは、衣の繊細さは無いもののなかなかに美味い。具材の火の通り具合もアルデンテwという感じでいい。意外と重めなのでご飯がもう少し水分少なくパラッとしてたら完璧。でも近所のそば屋でこれが食えるなら十分満足。
遠くから足を運べとは言わないが、そば屋としては、近所にこういう店があったら割と重宝するだろう存在。その上俺にとってのキラーメニュー、夢呆そばがあるのがポイント高し。店の雰囲気(というよりフロアの店員の振る舞い)がいかにも頭悪そうな事がマイナスだが、逆に言えば、そのよくも悪くも商売っけの無さというか、サービス業としてのプロ意識の低さというかw、大抵の人間は拒否しないような敷居の低さがいい(その客がどう思うかは別として)。俺は、アホでざっくばらんな店員はそのキャラ次第だと思っているのでw、そういう意味では俺的にはまぁアリであった。だがどうせそういうキャラなら、もうちょっとオモロい事言ってくれればなお良いんだけどねw。勿論、名門@四ッ谷の店長(=ほとんどプロのエンターテイナー)レベルとまでは言わないけど。