'06 九州グルメツアー5日目〜『鹿児島食べ歩き〜帰京』
鹿児島市内での宿泊はいつも城山観光ホテルと決めている。結構評判らしいここの食事は今のところ味わったことが無い(市内で食べ歩くのが目的なので)が、露天風呂の泉質と桜島を一望できるこの景観が魅力的なのだ。流石にこれだけのスケジュールをこなす旅行での最終日は身体が少し重い。ゆっくり起きてゆっくり露天風呂に浸かり、夕方空港に向かうバスに乗るまでの残すところあと数時間を満喫出来る体制を調える。風呂に浸かりながら、これまでの4日間を振り返ると、とても4日でこなしたとは思えない程の密度に軽くめまいがするw。初日の最初に食べた因幡うどんが一月くらい前のような感覚だ。
この旅では生憎曇りが多く(それでもこの後九州全土があれだけの豪雨に見舞われた事を思えばラッキーだったのだが)、最終日の城山でもこの写真のように桜島は雲に隠れてしまっているが、それでもこの気持ち良さ(泉質含む)は格別だ。これだけ繁華街に近いところでこれが味わえるのが城山最大の魅力だろう。この日は珍しく朝は食べず、贅沢にチェックアウトギリギリまでこの湯に浸かって午前11時に宿を出た。
●いおワールド鹿児島水族館
この日最初に向かったのは、相方たっての希望で桜島フェリー乗り場近くの鹿児島水族館。全国的に有名なわけではないが、かなり立派な水族館だ。この俺が旅先で昼前にのんびり起きて飯も食わずに水族館....う〜ん、実に普通だw。つーことで今日は最終日に相応しい癒しの時間で幕開けだ。
いくつかこの水族館の名物を見て行こう。最初に目を引くのはこの水族館最大の水槽の主、巨大ジンベエ。写真ではちょっと奥にいるのでスケール感が伝わらないが、ギョッとするほどデカい。ゆうに5mはあるだろうが、それでもまだ成長途中だそうだ。成長すると、デカいので20mにもなるという。すげぇな。この水槽の幅が25mだそうだから、デカくなったら当然泳げるわけがない。一体どーすんだ? と思ったら、デカくなる前に海に帰すのだそうだ。すでにジンベイは絶滅危惧種に指定されてるので、無闇に見せ物にするのは難しいらしいが、ここでは子供のうちに海に帰して次のジンベイを連れてくる(鹿児島沖の定置網によくかかるらしい)事でその辺の問題を解決してるとのことだ。水族館で一生を終わらせない主義というのはなかなかいい思想だと思う。
このイカ、名前をトラフコウイカという。市場ではモンゴウイカだが、俺の知ってるモンゴウイカとは随分違う。こいつ、この体制のままずっと動かない。呼子の生け簀にいた元気な奴らとはえらい違いだ。こいつを見て俺は何故か真っ先に『美輪明宏』という名前が浮かんだ。たぶん『なんだか見た目的にジブリ映画に出てきそう→出たとしたら絶対美輪明宏が声の吹き替えやってそう』という連想からだと思われる。
俺的には一番アガった展示物。タイヘイヨウアカボウモドキというクジラの標本。これが展示された経緯はこちらに詳しいが、このクジラ、これまで幻のクジラだったらしい。何でも全身の骨格標本の展示は世界初ということだ。そんな前情報は無かったが、とにかくカッチョイイ。俺も本職はプロダクトデザイナーゆえ、モノの形を作って口に糊しているわけだが、どんなに頑張っても自然の美しさにはかなわん。こういうものを見せつけられるにつけ、俺のやってる仕事はまるで錬金術のようだなぁと思う。鉄から金なんて作れるか! と、最後は全く関係ない上にグチのような話になってしまった。失礼。
イルカ君もいたよー(キャピ)。子供に交じってショーを眺めてきたが、正直子供の頃のようにアガりはしないなぁ。ただ、ここのショーがオモロいのは、イルカを仰向けにして局部のアップを正面のモニターに映し出し、『さぁ、これはオスでしょうかメスでしょうか』なんて、教育番組のフリして一歩間違えば場末のストリップのような、教育上スレスレのコーナーがある事。イルカの知能からすると、本当は自殺ものの恥をかかされてるという想いが彼らの中にあるのではなかろうか。それとももはやそれが快感に変わってしまっているとか.....こういう健康的な場所で38歳のオヤジの考える事は不純だ。
ここのイルカ達の扱いで面白いのは、ストレス解消のためにお散歩タイムが儲けられてる事だ。これは建物の前を流れている普通の運河だが、ここまで出てきて通りすがりの人々に愛想振りまいたりしてる。こっちの方がショーよりよほど楽しい。
ということで、思った以上に結構楽しめてしまい、すっかり長居をしてしまった。気づけば既に昼過ぎ。流石に腹が減ってきた。この日のお昼の店だけはあえて決めずに九州入りしたのだが、昨日Fさんの協力で決める事が出来た。時間の関係でこの昼が事実上最後のちゃんとした食事(夜は残念ながら、めぼしい店の開店時間と飛行機の時間がどうしても折り合わない)となるので、色々と候補があったのだが、豚しゃぶ、寿司、とんかつ、さつまあげ、ラーメンなど、めぼしい名物は2年前にある程度制しているので、今回はもう少しマニアックに『とんこつ』を食してみる事にしたのだ。Fさんに美味しい店は聞いてある。意気揚々と鹿児島最大の繁華街、天文館に向かった。
●つるや@天文館
鹿児島の郷土料理、とんこつをご存知だろうか。リンク先を見れば分かるように、黒豚のなんこつと呼ばれる部位を芋焼酎と黒糖で骨まで柔らかく煮込んだ骨太な料理だ。Fさん曰く、『鹿児島の味覚の基本は、すべからく焼酎に合うという事を基準に作られている』ということだ。つまり焼酎の舌にピリッとくる刺激を中和するように、黒糖、味噌、甘い醤油による味付けが基本になるのだそうだ。なるほど、確かに鹿児島の醤油は甘い。こういう、鹿児島の味について一家言ある方に聞くのが一番確実で失敗が無い(事実二年前お世話になった時に既に思い知っている)ので、あえてこの日だけは決めて来なかったのだ。
とんこつが食える店でFさんにオススメされたのがこの料亭鶴家だ。もし事前に調べて決め打ちしてたとしたら、こういう店はまず思いつかない。『鹿児島郷土料理』とうたっているところから選んだだろう。そして恐らく失敗していただろう。やはり地元の食通に聞くのが一番確実である。ここは昼間はランチ会席コースを出している。生憎アラカルトはやっていなかったので、コースを頼んで追加でとんこつを単品注文した。
まずは先付け。枝豆を添えた氷室豆腐石川芋のウニ焼き、鮎鮨、茄子の田楽、トマトの海老チーズ焼きなどなかなかに豪華。しかも全体に穏やかな味付けで俺好み。やはり地元の(相応に美味いものを熟知してる)人がお勧めする店は間違いない。あとはもう流れに身を任せていれば安心だ。
椀もの。アサリのすまし汁。別に目新しい事は何も無いが、ほんのり柚子が効いて、確かな仕事。アサリの旨味というのはそれはもう強いので、こういう風にあえて抑えめに出してくれた方が俺は好きだ。身の方もダシガラでなくちゃんと楽しみたいからね。
続いてお造り。水イカとカンパチと平目。そのまんまだが、季節ものはやはり美味いね。
メニュー上は煮物の扱いだが、揚げ物。玄米の衣で胡麻とイチジクの甘めの餡で包んで揚げたものを出汁と会わせてある。玄米の香ばしい香りと風味が何とも言えず美味。思ったよりあっさりしていて口直し的な役割も果たしてくれた。
焼き物はトビウオのアーモンド焼きだ。流石旬のトビウオは旨味も濃く美味い(何せ出汁に使われるくらいだからね)。それをさらにアーモンドで香味の増幅。見た目に寄らずメインに相応しい食べ応えのある一品だ。
そしてこっちが本当の揚げ物。鱚をカボチャで挟んで揚げたものを中心に、筒オクラ、海老などを盛り込んである。鱚も美味いが個人的には海老が気に入った。枝豆かなにかをライスペーパーで包んであげてある。パリパリ感とジューシーさの対比が何とも言えず美味。この時点で食事(ご飯とジュンサイのみそ汁)をもらう。
〆のデザートはレモンシャーベット。夏みかんを添えてある。爽やか〜。
そしてこれが待望のとんこつ。いやぁ、ちゃんとしたお店で食べるのは初めてだが、これは美味いわ。名古屋の土手焼きとも、勿論中華の角煮とも違う骨太かつ上品な甘みと旨味。極めてシンプルだがとても奥行きを感じるものだ。見た目からは想像出来ないほど穏やかな味なのに、それでいて骨まで軽く噛み砕ける程煮込まれている。この店が美味いからなのか、『とんこつ』という料理自体がこういうものなのか分からないが、この上品さは恐らくこの店だからこそなのだろう。鹿児島に来た際には是非お勧めしたい豚肉料理だ。
やっぱり鹿児島。別に凝ったり変わった事はせずとも、元々獲れる素材の良さを十分に発揮させる事に長けてるところだとの思いをあらためて強くした。骨太だが優しい。それが食から連想する俺の鹿児島のイメージだ。勿論人もそう。今回世話になったFさんは、日記やレビュー等(Fさんは日本のレゲエライターの第一人者だ)の文章からはイメージしにくいが、まさにそんな人だ。仕事や生き方には厳しいが、遊びにいきますといえばサッと手を差し伸べてくれる優しさがベースになってる。今回もFさん夫妻のお陰で素晴らしい鹿児島滞在を満喫させて頂いた。あらためて、仕事で多忙な中ありがとうございました。でもまた行きますけどw。
●喫茶ママ@天文館
食後のデザート(さっきのシャーベットは無かった事になってる)は、2年前に行きそびれた喫茶ママで。人生初の白熊(アイスは食った事あるけどね)だ。なにせあのときは丁度休日に当たってしまい悔しい思いをしたのだが、初志貫徹で無邪気でお茶を濁そうとはせず2年我慢したのだ。想いもそれ相応に増幅している。
きた。結構な迫力。ようするにフルーツかき氷なわけだが、流石に老舗だけあって氷がフワフワ。自家製の練乳も的を射た甘さだ。フルーツもこだわってるだけあって通常喫茶店で申し訳無さそうに添えられてるものとは鮮度が違う。それもそのはず、カウンターに沢山のフルーツが並んでいて、その都度切って出しているのだ。見た目は大した物量感だが、難なく完食。二年越しの夢(って程の事は無いが)がかなって、それに見合う味を確かめられて大変満足であった。
デザートの後はおやつ(ってもはや言い訳にすらなってない)。名前をうっかり忘れたが、さつまあげの食い歩きである。2年前は実はやってなかった。というのも、そのときは中央駅の一番街商店街にあるつきてんの芋の天ぷらに惹かれてしまい、食い歩きはあつあつの芋の天ぷらに譲って、さつまあげはお土産に降格(なのか?)しまったからである。あれは最高であった....(遠い目)。機会があったらさつま揚げだけでなくそちらもお勧めしとく。
ああ、今回はさつま揚げだった。残念ながら揚げたてという程暖かくは無かったが、歩き食いというのは何故こんなに楽しいのか。ここでは芋天とチーズ入りの二つを食べたが、どちらも美味しかった。しかし実際、鹿児島で一番さつま揚げが美味い店(食い歩き出来る店で)はどこなんだろうか。とにかく店が沢山あるのでどれがいいのかよく分からなかった。今度はしっかり調べて最高のさつま揚げをゲットしたい。それが次の課題といえよう。
さて、これで長かった4泊5日九州食い倒れの旅は終了である。まぁ実はこの後夕食にとんかつを食ったのだが、時間の関係でどうしても目当ての店に行く事が出来ず、おまけにやはりというかここに書くまでもない店であったので割愛する。その代わりと言ってはなんだが、鹿児島ラーメンの代名詞的存在『こむらさき』の取り寄せバージョンをF夫妻から後日送って頂いたので、それの実食レポを乗せておく。
ちなみに2年前には鹿児島最古のラーメン屋のぼる屋、そしてこむらさきと人気を二分するくろいわでラーメンを食べた。これで鹿児島ラーメンは一通り食べたといえるだろう(取り寄せだが)。
●こむらさき@鹿児島の取り寄せバージョン
九州では今回食えなかったのが残念であったが、家に帰ってきても九州を味わえたのは存外の幸せであった。実際、俺はラーメンの取り寄せやお土産は滅多にしないが、結論を先に言えば、これならいつでもまた取り寄せたいと思える高い完成度であった。ここまで満足度の高い取り寄せラーメンも初めてだ。
まず中身を見てみると、スープ(希釈無し)と麺、それに生のキャベツの塊wと刻んだネギ、胡椒の小袋がついている。取り寄せラーメンに生のキャベツの塊、それも手本として一食分だけ刻んだものを忍ばせてある取り寄せラーメンも珍しい。本気で再現してもらおうとの意気込みが伺える。麺は生せは無く限りなく乾燥に近い半生。まぁ乾燥と言っても良いだろう。見た目からして鹹水や卵等のつなぎを感じさせない、素朴な味を想起させる。そういえばのぼる屋もそういう素朴な味の麺であった。
作ってみた。まず香りからしてラーメンでは今までかいだ事の無い独特の香りが漂う。和ととんこつの組み合わせなのだが、想像以上に和が勝ってて優しい香り。味の方もそうなのだろう。特に特徴的なのは昆布と椎茸。とりわけここまで椎茸の香るラーメンは初めてである。見た目も独特だが潔くて綺麗。食欲をそそる。
食うと、やはり想像通りのあっさり味。ステレオタイプな九州のラーメンの様相を全く呈していないので好き嫌いは別れるだろうが、俺はかなり好みの味。この優しいスープと麺がまた合ってる。のぼる屋同様なんの混ぜ物も感じない素朴な味ながら歯ごたえはしっかりしている。茹で時間をインストラクションより1分少なめに茹で上げたが正解であった。またこの細さもストレート感もスープを必要以上に絡めず穏やかさを保つのに一役買っている。店で食うよりはそりゃ少しは味が落ちるのだろうが、こむらさきの何たるかは十分伝わる内容。もう一度お取り寄せして食べたいと思ったラーメンは初めてであった。
スープが特徴的だったので、あえて残してこんな事してみた。これがちょうど中華粥のような、お茶漬けほどサッパリ過ぎないしラーメン程重く無い、絶妙なさじ加減の雑炊に変身した。一玉で足りない貴兄には是非お試し頂きたい食い方である。
これで一人前800円とは、パッと聞き高く見えるが内容を考えると安いと俺は思う。店のラーメンと100円しか違わないというところにもその自身が垣間見える。帰ってきてもまだこうして九州の余韻に浸っていられる幸せ。あらためてF夫妻のご厚意に感謝!
というわけで、長きに渡って連載してきた九州グルメツアー日記もこれでおしまい。最終的にどれだけの人がここまで読んでるのか知らんけど、あんたは偉い。普通こんなに読めないよw。まぁこの連載始めてからアクセス倍増したので、今回の旅には直接関わってない人でも多分楽しんでくれてるのだろうと信じて、筆を置く事にする。あらためて、九州で世話になったK夫妻とF夫妻を初め、出会った人全てに感謝! これが始まりなので、引き続きよろしくお願いしますよ。ではまた、パスタや美味い店のエントリーに戻るとします。これやってる間に書きたい事溜まっちゃってるんだよね。急いで追いつかなきゃ。
(完)
Comments
こむらさきレポまで入れてもらってありがとうございます。
チャーシューは黒豚なんですよ。
最初食べたときはこれがラーメン?と思いましたが、
今ではここ以外のラーメンをほとんど食べなくなりました。
Commenter: blanc | 2006年07月28日 12:24
どもども。昨日全部完食しましたw。
チャーシューは、スープにずっと浸かっていたわりにはちゃんと旨味を残してますよね。
飾りじゃなくちゃんとメインになってた。
岐阜泉屋さんの鮎ラーメンという、別格というかちょっと反則なw
取り寄せラーメンもあるんですが、あれを除けばNo.1、
少なくともラーメン専門店の取り寄せでは一番だなー。
良かったらお試しあれ↓ラーメンとしては高いけど、それだけの美味さです。
http://www.nagaragawa.com/shopping2/index_q.html
Commenter: pasta-man | 2006年07月28日 13:25