子持ち鮎のなれ鮨とポルチーニのクリームソース
なれ鮨というと、鮒寿司に代表される、限られた人しか喜ばないマニアックな食品というイメージがある。実際、俺も昔鮒寿司を食った事あるが、それはそれはマニアックな味と香り。まぁクサヤなどと同様病み付きになるという気持ちも分からなくも無いが、そのまま食べるのが精一杯で、とても料理に応用しようという気になれる代物ではない。
ところがですね、先日訪れた河原町サロンで頂いた子持ち鮎のなれ鮨。これは次元が違った。キツいはずの酸味は驚く程穏やかで、香りも爽やかどころかフルーティとさえ言える。これは鮎だからこそだと思うが、とにかくまるで上質の青カビチーズのような食材であった。『これは使える!』と思い当然その場で購入。そして色々あって遅れたが、やっとパスタに使う事が出来た。
結論から言う。想像以上に美味かった....決してキワモノ的な意味でなく。文字通りチーズの代わりにそのまま使えるのだが、乳製品ではないからモッサリしない。しかしあのコクと旨味は出ている。恐らく鮎のなれ鮨をここまでちゃんとパスタ料理にしたのは世界で俺だけだと思うがw、これはもしかするとかなり画期的なシロモノかもしれないとさえ思えてくる程の出来だったのだ。
これがその完成品。ゴルゴンゾーラの代わりになれ鮨を使い、ポルチーニと合わせてみた。具は缶詰のひよこ豆と白インゲン。写真から見た目はそのまんまクリームソースのパスタであるが、実物を前にすると、その香りからしてちょっと違う事が分かるはずだ。そして食べてみると、ゴルゴンゾーラとは違った独特のクセが生まれるかわりに、乳製品らしいクドさが無い。早く言えば食べやすい。初めて作ったのでクリームと具材とのバランスはまだ調整が必要だが、思った以上になれ鮨を前面に出しても大丈夫そうだ。今回は保険をかけて少しゴルゴンゾーラも加えてみたが、必要なかった。それほど、皆が思ってる以上にこの食材は『使える』のだ。
こんな事をしてるとどんどんキワモノに走ってるように感じるかもしれないが、本人は大まじめである。目先の変わったものならなんでも使うというのではない。その証拠に、俺は納豆や明太子(タラコならまだいける)は絶対使わない(何故ならちゃんとまとめるのが難しいから)。実際に食ってみて、『パスタとして』味のイメージがクッキリと浮かんだものだけを選んで使っているし、さらに実際調理してみて『間違いなくパスタである』と判断したものだけを紹介している。
ただしこの手の手作りの発酵食品は、得てして出来にばらつきがある。今年食べたものが来年も出来るとは限らないのが、難しいところである。いいのが手に入ればという条件付きになるが、少なくとも今年の泉屋さんの子持ち鮎のなれ鮨は、(勿論そのままでも美味いが)パスタに限らず色々な料理に応用出来そうな程、普遍的な味になってると思う。別に俺はかの店の回し者でもなんでもないがw、それくらい今回のパスタを作ってみて、気に入ってしまったということである。