パスタマン沖縄を喰らう〜プロローグ
かつて沖縄をほぼ海外のごとく疎遠な場所と感じていた人間にとって、かの土地のもつ魔力は凄まじいものがあった。楽園のような気候と美しい自然、何を食っても美味いものしかなく、しかも安い。人は皆温かく優しい。南の島とは縁もゆかりもない、遠く東の地で育ったかつての俺にとっては、ユートピア以外の何ものでもなかった。
いいかげん大人になり、行かずともニュース番組や雑誌、ネットなどで色々な情報が様々な形で入手出来るようになり、決して完全無欠な楽園などではなく、良くも悪くも様々な人間が生きていて、世知辛い事件も起これば不味いものもあり、他の土地と同じように日本の一県に過ぎない事を知ってしまった後でも、やはりかの土地に『我々の住む場所とは違う、スペシャルな何か』を求めてしまうのは、長年発酵した過剰な憧憬に他ならない。それが度を越すと『憧れ保存の法則』が発動し、現実を知るのが恐ろしくなり行きたくても行けない状態になってしまう。憧れに裏切られるのが嫌なのだ。最近まで俺にとっての沖縄と言う土地は、そんな場所であった。
一生行かなくてもそれはそれで良かったのだ。俺の妄想の中にだけ理想郷として存在していれば。そういう意味ではディズニーランドと一緒である。しかし浦安のネズミ王国と違うのは、かの地には確かに人間が生きて生活しているのだ。それに触れる事への欲求は、大人になって『日本の一県に過ぎない』事が分かるにつれてどんどん高まって行ったが、それを悉く憧れ保存の法則が行動を阻む。そんな綱引きを断ち切ってくれたのはカミさんだった。有無を言わさず、誕生日プレゼントとして2枚の那覇行きチケットを手配してくれた。こういう有り難い外圧があってようやく、40年目にして初めてあの夢の島に訪れる事とあいなった。思い立って明日すぐ沖縄に行けちゃうような人にとってはとてもバカらしい話ではあると思うが、それくらい沖縄に行くという事が俺にとって(自ら勝手に作った)重い決心を伴う行為だという事がご理解頂ければ有り難い。
知識だけなら、何度か行った事がある程度の人以上にある。食は言わずもがな、海は好きではないがちゅら海水族館という魅力的な水族館がある。そして俺にとって何より魅力的なのは琉球王朝時代の城址だ。石垣だけになってもなお、そのエキゾチックな美しさは目を見張る。あえて気持ちを遠ざけていたクセに、黒船によって鎖国から解かれたとたんにワクワクが止まらないのだから、人間の心などというものはゲンキンなものだ。タモリにとってのゴルフのように、助走が異常に長い分、飛距離もそれに必要なエネルギーも莫大な物となるのだろう(まさに憧れ保存の法則)。司馬遼太郎が城に行くたびに『こんなものは嫌いだ』と心の中で呟く気持ちと多分同質のものである。
こんな面倒な気持ちを抱えた状態で、恐らく国内では俺にとって最後の夢の楽園、沖縄を果たしてどう食いつくしたのか。たかだか二泊三日の旅なのに、例によって詰め込み過ぎな内容ゆえ所々読んでて疲れる部分もあるかもしれないが、俺の発酵した沖縄への思いがどこにどう着地したのか…これから書き始めようとしている俺にもまだ分からないが…書き終える頃には、あれから3ヶ月経ってもなお俺の中に満たされている幸福感を少しでも皆さんに共有してもらう事が出来れば有り難い。
Comments
お久しぶりです★
じゃりは沖縄行ったことないのでうらやましい!!豚足好きなので↑の画像がたまらないです。
レポ楽しみにしてます。
そしてそしてPastaのVietriの情報もお待ちしてます。
Commenter: じゃり | 2008年09月12日 11:36
じゃりさん:
PCが壊れてずっとコメント出来ずにいました、すみません。
「豚の足の断面は豚だった」と知って驚愕でした。後ほど書きますがこの写真のてびちの店、ほんとに美味いです。この店の為だけにまた沖縄行きたいぐらい。
この沖縄が4月の終わりで、その後何度もツアー行ってるので、それを全て消化することを考えると気が遠くなります…
Commenter: pasta-man | 2008年09月29日 01:30