まるい@押上のガイドライン
先日、例によってとんかつ北品川で海老フライを五本ほど食い終えたところでwグルメな友人夫妻から報告の電話があった。
『今まるいで食べてきたよ〜。美味かった!』
で、二階に通された夫妻は、そこでたまたま相席になった見ず知らずの人と色々話しをしてたんだが、どうやらその人はあるHPを見てまるいに来たんだそうな。そのページはなんだか食い物関連の記事が沢山凄く詳しく書いてあって、写真も豊富で...特にそこに書いてあった『とんかつ北品川』ってのが凄くて云々....と。そこで夫妻はピンときた。
『おい、それってもしかして....pasta-man?』
ビンゴだったそうなw。全く世間は狭い。その人というのが果たして俺と面識がある人かどうかは知らないが、聞けばゆるりにもここを見て来た人が結構いるとオーナーが言ってたし、全く、blogを再び書き始めた甲斐があったというものだ。
しかしちょっとまて。まだこのblogにはまるいの事が書いてない。その人は以前livedoorで書いていた俺のblogか、mixiのコミュあたりを見たのだろうか。それはそれで凄いが、俺がいつか書いた記事を読んで行ってみたという有り難い人が少なからずいるのだと思うと、早いとここのblogにも紹介しとかないといかんではないか。なにしろこの店への俺の思い入れというのは、正直ハンパではない。何故なら俺をモツ焼きの虜にしたのは、他ならぬこの店なのだから。だからハンパな記事は書けないという思いがあって、今まで後回しにしていたというのもあったのだが、もうそんな事は言ってられない。性根据えて今まで以上に気合いを入れて書く事にする。
まるいに初めて訪れたのは、もう7、8年も前になるだろうか。今は上海にて新婚スウィートライフを満喫している肉友達のYに連れて行ってもらった。そのYは大学時代の先輩に連れて行ってもらったのだが、そのとき『おい、今からとっておきの店に連れてってやる。だから誰にも教えんなよ。あそこは大事にしないといけないんだ』と言われたそうだ。今でこそこの言葉は(後述するように)痛い程よくわかるのだが、あの頃は『何を偉そうに。お前の店か』と思った。
あの頃は今のように平日でも電話しないと入れないなんて事は無く、まったりと親父との会話も楽しめた。そう、この店の最大の魅力は、出てくるメニューの数々もさることながら、この親父(トップの写真参照)なのだ。特にオモロい事を言うわけでもなく、気の利いた台詞がポンポン出て来るわけでもないのだが、なんとも言えずいい雰囲気を持った実に素晴らしい親父なのだ。何が素晴らしいって、自分が扱う食材の全てへの愛だ。愛、愛って俺も何かにつけて五月蝿いがw、ここの親父が語る肉、臓物に対する惜しみない愛は、俺に多大な影響を与えた。別にブランド食材や高価な部位を使わずとも、これだけ食材を大事にしてるんだもの、美味いに決まってると。
親父はかつて肉の卸などをやっていたらしい。そのとき培った『目利き』の技が今に生かされている。その目は非常にシビアだ。あとで写真で出てくるが、ちょっとでも鮮度が落ちる(普通の店では少しも落ちたとは言わないレベル)と、例え充分生食に耐えるレバーでも若焼きにして(全く別の価値を与えて)出す。それもタダでw。シビアさがハンパではないのだ。だからといって、どこぞの寿司屋のように、そんな(ある意味プロとして当然の)事を自慢げにひけらかす事はせず、むしろそんな気遣いは無かったかのごとく客に何ら気負いを感じさせずにカジュアルに楽しませるのだ。プロというのはこういう人のことを言うのだと思った。
そんな親父が、2階と合わせると決して狭くは無いこの店を、奥さんとたった二人で切り盛りしている。連日2階まで大入り状態なので、厨房は常にキリキリ舞いである。そんな中、親父は常に忙しなく動いてるために、初めて訪れる人に取っては少し取っ付きにくそうな印象を与えるかもしれないが、全くそんな事はない。話しかければ気さくに何でも教えてくれる。しかしだからと言って調子に乗ってグダグダと色々話しかける人間はこの店には来ない。親父のその人の良い性格を皆知っているので、邪魔をしたくないからだ。また、本格的に混んでくるとどうしても料理が出てくるのが遅くなる。事情を知ってる常連は、自分から皿を片付けに行ったり、飲み物を取りに行ったりしているのが自然に行われている。グダグダと文句を言う無粋な奴は、俺の知る限り一人も見た事は無い。皆ここの親父を、この店を愛しているからだ(Yの先輩のように)。だから初めて行く人は、以上の事を踏まえて楽しんできて欲しい。そして運良くカウンターに座る事が出来たなら、なるべく無闇に話しかけず、流れに任せて親父との交流を楽しんで下さい。以下に紹介する、ただでさえ比類無いここの料理が、何倍にも美味しくなるハズだから。
まるいはとにかくメニューが多いので、一度に全部制覇しようなどと無謀な考えは起こさないようにされたいのだが、何しろどれもが美味いので初めて訪れると何を頼んでいいのか皆目見当もつかないだろう。だが迷う事は無い。何をおいてもまず最初にたのむのはこれだ。まるいをまるいたらしめているのが他ならぬこのレバ刺し。ここに来てこれを頼まない人間はいない。これがまずテーブルに置かれないと、まるいに来たという実感が湧かないのだ。それくらいここの看板中の看板メニュー。俺に初めてレバーの別次元のプリプリ感と濃厚な旨味を教えられ、それからいくつものレバ刺しを食ったが、未だここ以上のレバーには出会っていない。
ここのレバーは3種類ある。仔牛、成牛、そして馬だ。それぞれに明確な違いがあり、それぞれが別の魅力を持っている。日や時間によって全てがあるとは限らないが、あれば必ず全部頼もう。例え1人で来ているとしても、それで腹一杯になってしまう(まぁありえないが)としてもだ。それくらいのものである。
これが若焼きにしてくれたレバー(親牛)だ。申し訳なさそうに『夏だから、ちょっと鮮度がねぇ。折角頼んでくれたのにご免よ。サービスだから』と申し訳なさそうに出してくれたのだが、多分大半の人は気づかないよ、というレベルの臭みと、若干柔らかくなって歯ごたえが落ちてるくらいのもんで、全然普通に出せるレベルの質のものだった。むしろタタキにすることで旨味が増幅されて、これがまた美味いのだ。全くシビアにも程がある。
生もの系で続けよう。ここの生もの系のもう一方の雄、馬肉の刺身だ。馬の赤身でここまでとろける肉を俺は知らない。その上味も濃厚なのだ。なのに後口は非常にサッパリしている。『さくら丼』という、どんぶりに山盛りの飯の上に、この切り身をこれでもかと乗せたメニューがあるのだが、これを初めてかきこんだ時の高揚感といったら....もはや至福を通り越してトランス状態であったw。これを少人数で頼むと、後が食えなくなるという危険なメニューだが、慣れてきて余裕が出来ればそちらも是非チャレンジしてみて欲しい。
上の馬肉をタタキにして、この店オリジナルのニンニクが効いた甘めのタレをかけたのがこの馬ステーキ。グラム単位で注文する。初めての人はまず上の馬刺から行った方がいいと思うが、6人以上の人数がそろっているなら、このタタキと生の両方を頼んで食い比べて欲しい。フレッシュ状態と火が入って旨味がより活性化したものを食ってみる事で、ここの馬肉がいかに凄いかが重ねて実感出来る。
生もの系でもう一つ、腹に余裕があればこのタン刺しも行ってみて欲しい。淡白でありながら噛む程にねっとりと舌に絡んでくるこの食感のタンはなかなかお目にかかれないと思う。それもそのはず、ここは絶対仔牛のものしか出さないのだから。いきなり二人でこの店に来たのなら、まだ他にも頼むべきものは沢山あるので、生もの系は上記のレバーや馬にゆずっても構わない。(追記:最近は親牛のタンも別メニューとして出している)
初めて俺がガツ刺しの凄さを思い知ったのもこの店だった。尋常でないプリプリ感を堪能出来る。ただし少数で沢山楽しみたい場合はあまり向かないかもしれない。結構な食い応えがあるから。何回目かの訪問の時に頼んでみるといいだろう。そのときは、『まるいサラダ』でもいいかもしれない。生野菜の上にこのガツがゴロッと乗っている異色のメニューであるw。そのタレもまた秀逸なので、そちらもいずれどうぞ。
この辺で焼き物メニューに行こう。焼き物で必ず頼むべきものといえばこのシロである。ネギ入りとネギ無しがあるが、それは好みと気分で決めれば良い。馬ステーキでも登場したこの店独特の甘みの効いたタレとの相性は、これ以上は考えられないほど。未だ実現はしていないが、俺はこのシロを山盛りの飯に全部乗っけて一気に食うのが夢なのだw。俺の中では、大げさでもなんでもなく、今まで体験した全ての料理の中でBest10に入る程愛してやまない一皿である。
この店は牛、豚、馬、鶏と、一応4種類の肉が楽しめるのだが、この中で一番おろそかになりがちなのが、強いて言えば鶏肉だろうか。勿論もも焼きを頼んでも一向に問題ないのだが、もし食べた事が無ければこの鶏のスキ身にチャレンジしてみて欲しい。俺は宮崎の宗八というマニアックな鶏屋で体験したのが忘れられないのだが、東京で食うならここだ。スキ身というのは首の付け根の肉のことで、しっとりとふっくらとした、一見鶏とは思えないソフトな食感が楽しめる。
昨年の末に初めて食ったのだが、焼き物の中でシロの次に好きなのがこのコブクロモトだ。実は今になってこんな名前だったろうか若干不安なのだがw、とりあえず次に確認に行ってくるまではこのままにしとく。大体コブクロモトなどという呼び名があるのか俺は良く知らない(親父は良くオリジナルの呼び名を付ける)し、俺の知ってるコブクロ(子宮ね)とはだいぶ違う。が、これがなかなか面白い食感で美味いのだ。ミノよりもしっとり柔らかく、コブクロよりも小気味良い歯ごたえが楽しめる。早急にいって確認しないとと思っているのでしばしお待ちを。
メニューに載っているのを発見したのが昨年暮れだから、これは今のところまるいの中で一番若いメニューだろうか。名前を豚のこにく焼きという。なんとも可愛い名前だが勿論親父のオリジナルの名前だw。コリともクニュとも違う独特の食感だが、豚の旨味は正肉のように十分溢れている。当然親父に『これはどこの肉?』と聞いたのだが、同業が真似するので教えられないとw。俺は別に同業でもないどころか単なる素人だ。一頭から2つしか取れない(ホントか?)という事だけは教えてくれたが、2つという事は左右対称に存在するという事だから、顔の辺りだと践んでいるのだがどうか。まぁ単純に美味いのだからどうでもいいといえばどうでもいいが、気になる所ではある。
焼き物というにはちょっと語弊があるが、この軟骨ホイル焼きも、押しも押されぬこの店の鉄板メニューだ。誰もが頼むという意味ではNo.1のメニューかもしれない。シンプルかつオリジナリティ溢れるこのメニューは、豚軟骨を包丁で細かく叩き、刻んだタマネギや酒等の調味料と一緒にホイルに包んで蒸し焼きにする料理だ。この美味さ楽しさはなかなか口で表現しにくいが、とにかく食感見本市というか、コリ、プチ、クニョ、シャキ、プリなど、素材が縦横無尽に飛び回り、そこにはあらゆる口中快楽が詰まっているようだ。そうして遊んでいるうちにじんわり広がる軟骨の旨味と玉葱の甘み....至福としか言いようが無い。序盤でも終盤でもいい、とにかく頼むべし。途中から卓上の胡麻油や醤油、馬刺等に付いてくるニンニク等で味を変えればさらに楽しめる。
ここら辺でじみ深い煮込み料理に突入しよう。これはほほ肉をニンニクたっぷりのスープで煮込んだガーリック煮込み(まんまやね)。じわーっと広がる豚とニンニクの織りなす旨味がなんともホックリさせてくれる。ここの肉料理の数々は、基本的に脂の旨味よりも、赤身などの肉そのものの味わいを生かしたものが多い。ホロホロに煮崩すというより、しっかりと噛み締めて溢れる旨味を楽しめる。これもそのうちの一つだ。
この店随一のコジャレメニュー、チキンスパイシー。英語だw。これもどちらかというとサラダ感覚で食べるメニューだが、意外としっかり食い応えがあるので注意されたい。焼いた鶏の正肉を、レタスやトマトなどの生野菜と一緒に盛りつけ上からまるいサラダのドレッシング?をドボドボとかけたもの。そのタレがスパイシーだからチキンスパイシーw。じゃぁまるいサラダはガツスパイシーか?w。もし余裕があれば、親父の遊び心を堪能してもらいたい。
味噌仕立てではない煮込みを食べたのはここが初めてだったのだが、その時の衝撃といったら、軽く目眩をもよおす程であった。それくらい美味いと感じた。それ以降、白金の鈴木屋を初め、いくつかの素晴らしい煮込みに出会ったが、やはり今でも煮込みといって真っ先に思い浮かぶのはここの煮込みだ。生憎写真が上手く撮れてないが、実物はもっと色白でトロンとした感じ(濃度は頼む時間によってブレるが)。モツ、スジと根野菜の旨味が相乗効果で何倍にも膨らんでいるのを感じる。このままかき込んでも勿論美味いし、飯にも良く合う。また、レバ刺し等に付いてくるネギやニンニクを取っておいて、胡麻油と混ぜるというのもなかなか美味い。さらに裏ワザとして、宴終盤(客もまばらになった頃)に、この煮込みのスープだけ貰い、次に紹介するサンドのパンを付けて食うというのもある。多少ゲテっぽい感じもするかもしれないが、何度か通うようになったらだまされたと思って一度やってみる事を勧める。
とうとう最後のご紹介。必ずと言っていい程〆に頼む仔牛サンドだ。仔牛のローストビーフと生野菜を、何故かパン屋に特注で作らせている(モツ屋なのにw)パンに挟んで食う。〆にはかなりのボリュームなので、大抵は回し食い。しかもパン等が余っていると、サービス! とかいって1、2個余分に作ってくる事があるので注意したいw。ちなみに写真は、そんな時間帯に頼んだら、その時余ってた食材を色々と入れた、仔牛サーモンその他wサンド(注:本来そんなメニューは無い)だ。何しろ量がありすぎてどんな味だったかあまり覚えてないがw、とにかくここのパンはモツ焼き屋が出す物とはとても思えない、甘みのふくよかな実にいい味のパンが出てくるのだから意外にも程がある。そしてこれが前述の通り煮込みの汁に合うんだw。
いつかここの煮込みを家で忠実に再現してみたいのだが、未だに上手くいった試しが無い。このテーマは生涯かけて取り組んでいく事になるだろうw。
勿論、本当は全メニュー紹介したいくらいなのだが、今回ここに紹介したメニューのざっと4倍以上はあるゆえ、とりあえずクラシックスと呼べる代表的なもののみ取り上げた。これだけでも最低4人で行かないと食いきれない量だろう。しかし行けば必ず禁断症状が出るので、その勢いで何度か通って是非全メニュー食べてみて欲しい。どれも外れる事は無いから。そして出来ればカウンターに座って、親父の所作や会話をじっくりと楽しんで下さい。客は勿論、素材、仕事場、色々な物に降り注がれる親父の愛(サブっぽいw)に触れて、作り出す料理以上に『虜仕掛けの明け暮れ』になるハズだから。少なくとも、そこそこ美味いものを知ってる大の大人を、わざわざ電車で1時間以上かけて7年8年も通わせる程の引力はあるから。
Comments
最近行ってないんで近い内に行かなくては!(義務)と思わせる内容オツです!
全品制覇は遠い道のりです。
煮込みwithパンはパンの甘さと煮込みの汁の旨みで×10くらいの美味さを感じますね。
蛇足ながら補足しておきますと、飲み物(お酒)はカボスハイ(焼酎と炭酸と半分に切ったカボスだけ)がさっぱりしてお薦めです。
焼酎はボトルでもらうとモアベターよね。
あとは自家製ザクロハイなんてのもあります。
Commenter: matsu | 2006年04月14日 18:19
私も久しく行ってないので
パスタマンさんが次に行く時に
是非誘ってくださいね!
Commenter: マキ | 2006年04月14日 22:36
matsuやん:
今見ると変な表現沢山あるけど、生々しさ重視でそのままにしときます。
全品制覇は、行くたびに食いたくなる定番メニューを
消化するだけで結構腹一杯になるからなかなかに難しいよね。
酒関係のフォローサンクス。下戸の俺には大変助かるっす。
マッキー:
俺はもう明日にでも行きたいくらいなんだがw、
マッキーが時間取れる時に合わせるから是非行こう。
あ、まるいで誕生会やろうか? GW中にでも。
Commenter: pasta-man | 2006年04月15日 00:47
きゃーきゃー!是非やりましょう!>誕生日会
もちろん合同誕生会ですよね!
この日を空けとけ!と言われれば
いつでも空けるようにしますよ~。
Commenter: マキ | 2006年04月15日 12:31
はじめまして!
mixiのコミュから来ました。
とてつもなく美味しそうですね。
お店への愛情が伝わってくる内容を見て行きたくなりました。
Commenter: Anonymous | 2006年11月11日 21:30
どなたか存じませんが、嬉しい書き込みありがとうございます。
是非行ってみて下さい。後悔はしませんよー。
予約の上、種類が頼めるようなるべく大勢で行く事をお勧めします。
Commenter: pasta-man | 2006年11月13日 14:29
先日やっと念願の、とんかつ北品川を伺う事ができました。
もともとは、こちらの、まるいの情報を探していた事から、北品川に行き着いたのですが、北品川のほうが先になる形になってしまいました。まるいはまだ伺えてません。
そして、今回、また別の情報が!!!
池尻大橋、徒歩圏なんですよねえ・・・
ゆるりが、先になりそうです。
いつもいつも、美味しい素晴らしい情報ありがとうございます。
これからも、楽しみにしております。
Commenter: mariruu | 2007年04月14日 14:53
どもども、初北品川おめでとう(って言い方もおかしいが)ございます。レポートも読みましたよ。久しぶりに豚の角煮がでてましたねー。羨ましい。もう2年ぐらい食ってないです。
ゆるりももう一年行ってないなぁ....行きたいのに。是非親父と仲良くなってあの店のポテンシャル引き出してきて下さい。
Commenter: pasta-man | 2007年04月16日 00:01